私は左記の理由により辞表を提出致します。
平成元年   月  日
       あぶくま新報社編集主幹 東清和
あぶくま新報社代表
 理由
 今般横村代表が私にとられた十一月分給与不払いの行為は、非合法的反社会的なものであり、経営者としてその見識と資格を疑うものであります。
 いまこの時代、社員に対してその見識と資格を疑うものであります。
 今この4時代、社員に対し何の理由もなく給与を二か月にわたって不払いにして平然としておられる経営者がどこにおりましょうか。何を勘違いされておられるのか給与というものは雇用者に支払いの義務があって、雇用されている人の陽動に対する報酬であります。従って給与は雇用者のものではありません。
  経営者はいかなる正当な理由があろうとも給与の不支払いは非合法的なものでありますが、その上、不支払いの理由をなんらお示しにならないことは、重大な過ちを侵されています。
 理由を明示することなく、また、一切の事前の宣告もなく、一方的に給与を不払いにする経営者の行為は陰湿横暴であり、人権を踏み躙るものであります。
 私はこの機に及んでもこのような愚かな行為が横村代表の考えに基づくものとも思えずどなたか浅はかで不見識な方の意見に横村代表が惑わされたことによるものと推察せざるを得ません。
 なぜならこのような横暴な行為が社会的にどのような重大な意味を持つものであるか、また、私に対してどのような意味を与えるものか、さらにはこのような行為がどのような形になって返ってくるかは、横村代表は常日頃から何びとに対しても社会の屈折した現象に対して、あるいは人の理不尽な行為み大して批判し、社会のの見識を問い、また、不正義に怒り、自費の心の無さを嘆き、条理のあるべき姿を説いておられるからであります。
 また、もし横村代表の身近な方が、今般横村代表が私に対してとられた行為と同じような行為を受けたとすれば、横村代表はその経営者を罵り、糾弾されるでありましょう。
 「懲らしめてやる」というお心で制裁的懲罰する側の義務であります。
 まして、過去の労働に対する報酬において懲罰することは、人権を侵す重大な誤りであります。仮に懲罰の理由が正当であったとしても、過去の給与に遡及することができないのは、横村代表なら百も承知のはずです。
仮に今後の給与において懲罰をかけるとしても、正当な理由がなければなりません。「態度が気にくわない」では理由になりません。これならまず経営者は堂々と注意を与えるべきです。「経営の方針に沿わぬ」という理由であるならば、経営者はその経営の方針を明確に示すべきであります。
 今般不払いの理由を明らかにせず、さらには支払い日を明らかにしない横村代表のとられた行為は、経営者として自らを正当化する理由があったとしても、社会的には卑劣であり卑怯であります。また、陰険で極めて悪意なものと言わねばなりません。
 企業は社員の家族の協力と業務への理解を求めます。事業化にとっては大切なことかと思います。今回の措置は、年末から年始という特殊な月であるにもかかわらず、妻や子を持つ社員の家族をも巻き添えにされる行為であり、そこには一遍の社員の家族に対する思いやりもやさしさも見当たりません。
 あまりにヒステリックで非情な行為であります。とても現代の経営者のとる行為ではありません。いまこの時代にこのような経営者の感覚があろうとは信じられるものではありません。かつて封建時代の徒弟制度的な感覚でありましょう。
 社長という立場は決して横暴が許されていいものではありません。一つの事業を成就することでは、社長と社員は責任分担の協力関係にあります。経営者がシャインを威嚇したり、常に陰険な不応上で社員に処することが経営者の力量を示すものではありません。これは臆病で小心な人間が己を大きく見せようと表現する手法です。
 私は心から申し上げたい。常軌を逸した不見識な、しかもなんらの予見もできない方のご意見に惑わされることなく、御目覚めください。
 前時代的な、卑劣で陰険な行為に反省されることを願わずにはおられません。
 このような行為は、横村社長自身が苦しまれることであり、いい結果が生じるものでもありません。誤った考えをお改めください。
 思えば、五十九年十月、路頭に迷った私を拾い上げていただき、未熟な私にもかかわらず、この原町市において存分に仕事をさせていただきました。感謝しても感謝しきれるものではありません。
 あれから四年余の歳月が経ちました。あぶくま新報は新年号で百三十四号を数えるに至りました。私はこの横村代表のあぶくま仙法発行に踏み切られた勇気と原町市に対する愛情、さらに私どもに対する慈愛と励ましの真心に尊敬と感謝の心でいっぱいでありました。
 私はまだ理解に苦しむものでありますが、しかし、残念ながら、私は今般、横村代表が私に対しとられた理不尽な行為は、私の横村代表に対しての役目を終わったものと判断せざるをえません。それを告げる言葉が今回の行為でありましょう。未払いの行為を受けて二か月、このような仕打ちのなかでこの間も新聞を発行させていただいた私はその責任を全うしたと考えております。
 横村代表の責任においてなされた行為でありましょうからその意に沿って、また私自身生活していく糧を求めるためここに辞表を提出するものであります。
 私は横村代表がどのような理由をもってとられた行為か、今もってわかりませんのでお詫びする何ものも持ち合わせておりません。むしろ、愚かで女々しい行為をなされたものと失望しています。誠に残念なことでありました。五十九年十月からこの間、いろいろとお世話いただきありがとうございました。
以上

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