海軍報国号の命名式は、昭和九年十月二十八日に挙行された。
「中秋の空にえがく
  四機・銀翼の雄姿!
    けふ、市営競技場大広場に
       報国福島号命名式」
 というタイトルで民報は伝えている。
 「県民赤誠の結晶なった報国機福島号の命名式はいよいよいms二十八日午前十時、福島市営運動場に挙行される。われらの艦上戦闘機は既に組立を終了し操縦者和田大尉の試験もすんで、ただ命名と県内訪問の旅を待ってゐるばかりであり、一切の準備は全く完了した、報国号と共に県内の空を飛ぶ僚機三機は昨二十七日矢吹ケ原飛行原に到着して今朝を待機してゐる、命名式場の壮観、その附近と市内に晴れて空飛ぶ飛行機を見んとする人々で賑がひを呈するであらう」
 と報じ、写真特集を組んでは、そのスマートな翼を写し、見仰ぐ学童たちの表情をとらえている。
 報国号は命名式後、信達地方から相馬へ出て、原町の雲雀ケ原に着陸小憩した。この時の記念写真が残っていて、原町市の野馬追の里歴史民俗資料館に飾られているが、残念なことに「昭和二年 郷土訪問飛行」と誤った解説が付されている。一目見て、エンジンカバー(カウリングという)と翼の形で艦上戦闘機と判明する。昭和二年に、日本にこんな近代的な飛行機はなかった。
 機種は海軍90式艦上戦闘機。

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