明治44年7月13日民報
○ 傘の山人の丘 二面ノ続
夜の森の雑観
審判の櫓から夜の森の丘を見ると、一面洋傘で填て居るのだ、丁度洋傘で造り上げた浮城の様に其間々から白い黒い、赤い、色々の顔がハラハラと蝶が舞ふ様に扇が翻へる。人の山、傘の丘の様で其処に只一本紅い「松の友」と紅い旗が飛び抜けて見えるのは、広告に妙を得たもの、其ウヂウヂした人の顔の集積は記者が此稿を書き終って寝に就く時にも明々と眼に浮ぶ。
△堀内秀之進 今日の指揮官で審判長を兼ねた様なのが三軍中に音に聞えた堀内秀之進!! 其名によって見ると七十位の御老体と思はれるが実は四十前後の壮者、其後鞭を上げて、諸兵を指揮号令する有様は実に其名に負かず、祭典総務の佐藤政蔵氏が「此荒武者共が比較的静かなるは、あの人の指揮宜しきを得て居るからだ、あれが他の人なら到底君……」と語る。処が弘法も筆の誤り、中の郷の一人を間違ひて其番に除外したので、其祖父の様な老人が「此年初陣の者を何故除けた」と云ふ抗議で一歩も退ぬ形勢に遉の堀内も一本参って此次に加へる」と答ひ漸く事収まる。
△桜田の勇士 

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