小高町空前の賑(にぎはい)
全町乙女の如くゴテゴテの体(てい)

小高町 大正3年
在旧十月十四日の市日を七日に繰上げ「小高の秋市」として年々行ふ事牟(しか)り其第一回を二十三日より挙行、町々より三百五十余円の寄付を求め悉(ことごと)く装飾に費したれば各町殆と花の如き着飾りし乙女の如く美麗に時田岩太郎氏宅地内に
▼少年大角力有 り総て本場所の型通り行ひ常葉山、嵐山を大関に百名花化粧廻しよろしく二十二日は小高少年相撲協会の化粧廻し開きあり協会に賛助の家々を訪れ土俵入りの型を行ひお祝ひ申上げたり、本場所の木戸は無料なり
▼踊屋台の手踊 全町思い思いの余興を催す中には最も評判なるは踊り屋台にして和泉屋の桃子、玉子、トク子、岩亀の八重子、千代子など三十日も前から御桂子に余念なく一生懸命にて訓練されたればヤンヤの喝采を博する事請合なり
▼御趣向の花火 二十三四両日打ち揚ぐる花火は数百発に上り上る龍星、里下り空中にてパッと破るるや岡田商店の教育玩具、林薬品店の清涼丹の猫いらず、石田呉服店の足袋、桜呉服店の石効足袋、柏屋商店の猫いらず、田代呉服店の子供洋服、佐藤新聞店の新聞券、綿屋商店の三徳バッチ、村田商店の蝋燭其他景品券を入れあり面白き御趣向として大人気なり
▼見切品大安売  呉服太物荒物、小間物其他各商店にては連合して見切り品の大売出しをなすべく下町石田呉服店より小高活版所前迄を区域とし我劣らじと所謂「秋市」の大安売りをなすべく各店其競争的に店頭を装飾し商品の陳列振りに有らん限りの腕を発揮したり
▼火の波も陳腐 なれど夜の小高町は全町に亘る電光飾を装し大電灯を上町に二ヶ所、中町に一か所、下町に一ヶ所、停車場に一ヶ所、県社通りに一ヶ所都合七ケ所に点じ各商店も亦思い思いに花電灯を点じて景気を添ゆる筈也
▼横町には撃剣 会あり柔道試合あり尚武の気風未だ抜けざる相馬の事なれば竹刀凧に鍬持つ人も多く道場は例に拠りて横町貴船神社脇に設けられ之れ亦頗る非常の前景気にて出場者百以上に達すべし
▼其他に興行物 として小高座に新派劇齋藤正一行大車輪にて開演し例の柿岡の大曲馬停車場前に小高掛して開演すべく其他活動地獄極楽など大評判なり兎に角くも今回の「秋市」は小高空前の賑ひなるべし

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