明治35年12月21日 福島新聞
●相馬小高通信 当地労働者唯一の職業は羽二重業なるか近来景気のあしきを以て彼等は十分仕事の供給を受くる能わず何れも困難の状態にあり△役場は大隅町長以下何れも熱心に事務に革央掌 るより成績頗る り好評なり△新任小学校遠藤角弥氏は、着任以来職務熱心にして好評あり△駐在所巡査目黒兼蔵は益々評判甚だ宜しからず反省を望む△青年有志者須江恭山氏に不治の病 犯されて目下療養中病名は心臓なりしと云ふ実にあはれむべし△不思議なるは其の不景気にも拘はらず貸座敷芸妓屋等は相応に繁昌せり△近頃時ならぬ暖気を感し梅椿柿桃林檎等々の狂咲を為すみのあり是れ或は来年の凶作の前兆を為す者に非ずやと取越苦労をなす人もあり△本月十五日入営せる新兵は る十四日午前九時四十四分の下列車にて仙台へ出発す一町三ケ村の有志は停車場まで見送りしたり△本日一町三ケ村消防手の演習あり一同当町内に整列するや消火器の点検あり終て一同十八番台の 筒を携へ停車場前にて諸種の競技をなせり△怪しの火の玉 当町大字岡田字天神前と云ふはおふぎたる老杉老古松枝を交へて昼尚ほ暗き所なるか去る七月以来今日に到るまで怪しの火の玉飛び上かりて実地目撃せし人少なからず燐火かと思へば風雨の夜は決して出ず晴るゝ日の静かに暮れて人通りも途絶ゆれば大凡そ午后六時より七時の間に時を定めて径三尺ほどの火の玉舞ひ出てフラリフラリと浮ひつゝ福浦村村上に至り其処にて三つに別れて海に入る之れ怪しき奇妙な飛火の玉と云ふべし(十九日付)
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