43 裏方・楽屋・縁の下
 相馬野馬追の執行委員会事務局にとって、七月は本番である。息の抜けない毎日が続く。
 一年にたった三日間だけの祭り、と気軽にいう場合があるが、それは客から見る表の世界でのこと。
 いったん裏方へまわれば、一年三百六十五日が、相馬野馬追のための仕事である。
 何せ今年にしても、一月八日から宣伝のためのキャラバンが実働している。その七月なのだから、もはや待ったなしのスケジュールが過密状態で待機している。
 すでに裏方は祭の本番の渦中にいる。各郷騎馬会の役員決定も、あわただしいように発表されてゆく。
 芝居のキャストが決定し、配役が決まるのを横目で見ながら楽屋も忙しい。
 執行委員会事務局の実務担当の一端を追ってみる。
 七月一日、片印の確認。役付名簿の作成。団体席割指定準備。
 七月二日、出場者内容の確認。祭場地小屋掛工事発注。軍者会の場所設営の検討等。
 七月三日、ピロパック契約。道路使用許可申請(原町警察署)。
 七月四日、招待者、担当者の弁当発注。景品整理及び景品名簿の点検。
 七月六日、軍者会(午後五時よりニューさいとう)役付及び肩印交付式、出陣本祭。チラシ配布。
 七月七日、発馬券の経理。観覧席券の配布確認。
 七月八日、交通規制標識準備、点検及び補修発注。
 七月九日、担当係責任者説明会。市職員各係担当責任者。
 七月十日、祭場地、旭公園草刈り。
 七月十一日、記者会見。記念品準備。記者クラブと市長会見。事前資料準備。
 七月十二日、野馬追奨励手当支給手続き。(執行委員会、観光協会、中ノ郷)。
 七月十五日、出場手当支給決済。
 七月十六日、現地設営開始。維持課。(七曲りは準備完了)。
 七月十七日、野馬追警備打合せ(四団体)
 七月十八日、移動式トイレの借り上げ(二十三予定)。宿直者の確認。
 七月十九日、最終現場の確認。北泉浜事故防止対策。
 七月二十日、飲食物の発注(弁当一二五五ケ、飲物二八ケース、酒六六)。
 七月二十三日、宵乗り。軍者会。盆踊りパレード。
 七月二十四日、本祭。夜、お祭り広場。
 七月二十五日、野馬懸。祭場地清掃。
 七月二十六日、祭場地清掃。全員担当。
 このほかにも諸手続きがある。
 県農政課に対して百八十万円の補助金請求。
 観覧席販売用つり銭仮支出。
 案内所開設承認願い(原ノ町駅へ)。
 解説委員の派遣要請。
 警備手当の支給(打合せ時期)百三十人。
 食糧費支出(二十五日清掃後)
 被表彰者への通知(五日)。二十四日表彰。記念品および表彰状。
 交通規制許可申請関係の手配。
 売店仮設工事(商工会議所、五日から)
 疼痛標識図看板立仕様書(十一日)
 これらの項目の一つ一つに担当責任者がはりつけられ、水ももらさぬ布陣で事務局員たちは動く。
 著者自身の身辺でも、この頃野馬追に関する議論が花盛りである。なかには投げやりなものや無責任なものまである。否定的な論調の人々はたいてい表面しか見て居ないように私に歯思われる。
 裏方で祭りの縁の下の力持ちを演じている方々の存在に心を留め、その働きぶりを知ったうえでは、ご苦労様ですとしか言いようがないではないか。

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