24 新たな試み

 読者の中には、テレビの時代劇の最後にスタッフ字幕に「高津衣裳」という文字を見かけたことがあるだろう。
 時代劇のテレビや映画で使用する甲冑は、ほとんどこの会社が調達する。
 時代考証というものが全くされない相馬野馬追には、平安時代ぼヨロイを模した現代作品や、古色蒼然たる戦国ヨロイ、江戸元禄の名作まで種々雑多な参加があるので、とうてい統一感はない。めちゃくちゃだが「ヨロイはヨロイだから」という意識だ。注文しても無理だろう。
 ところで、岩井市の将門まつりでは、ヨロイ姿の武者行列が、まつりのメイン行事なのであるが、これは当然のことながら平安時代の扮装だ。
 武者ばかりでなく公家の貴人や姫君までそろえてあるので、ちょっとした統一感がある。
 全員で五十人。将門公に扮する人物を中心に、軍者クラスから小兵までいちおうのアンサンブル効果がある。
 まさか五十人だけでは迫力という所まではゆかぬ。しかし、騎馬ばかりが主役のように思い込んでいる相馬野馬追では、なかなか全体を感じさせるのが難しい。
 羽根田万通いうところの、
 「手をつけない方がいい」という言葉はその辺をさす。
 その相馬市で、今年は大変面白い試みがなされた。発言し実行するに盛んな相馬青年会議所びおいて、参加する野馬追を目指し歩兵隊を出現させたことは、おそらく最近の野馬追では大ヒットである。
 馬が主役の野馬追に、あえて馬抜きで参加しようというところが革命的である。
 あれはいい。
 聞けば、高津衣裳からの借り物だという。ヨロイ一両につき一万五千円也のレンタル料。三十両借りての参加だ。観光客でもすぐ参加できるという所が親切でよい。
 原町ではとても発想しないことだ。岩井市では五十人分一式で百万円。地元商店会の人達は、雨で当日中止になっても支払わなければならない事などをことさら強調していたが、雨が降ろうと槍が降ろうと堂々の騎馬行列は絶対に中止などありえない我々相馬からすれば、何とまあセンの細い祭りかな、と思ったほどだ。
 相馬では、個人で数百万円はたいてヨロイを求めるのは当たり前である。百万円では、きょうび車の一台も買えぬではないか。
 雨降って百万円ぱあになるぐらい何だと私はその時思ったが、しかしふりかえってみてわが商店街が野馬追に肩入れしてそれだけのことをしてきたかといえば残念ながら「野馬追は儲からない」などという実利一点張りの声だけのようで、逆に岩井市の場合を見直したのであった。
 岩井市の将門まつりと相馬青年会議所の徒歩組。この辺が、何とか自前でできる範囲かと思う。しかも、これなら野馬追から独立して、歩行者天国などとの連携ができる。将門まつりの形態はまさにそれだったのだ。

 

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