3月10日 平空襲 敵機我が上空を通過す

「ある日の軍国青年」は、平空襲の様子をこう記す。
「敵機我が上空を通過す。西は真っ赤に燃えている。そのうち木戸駅職員集まる。屋上に上ってみると影がうつる。約四時間燃え続ける。防空指令より「現在東鉄管内は運行不能にあり。常磐線は危機状態にありからよって列車進行の際は停車せしめてあかりを漏らさぬ様厳戒を要す」電報あり。その後の電話よりB29平を空襲し約四分の一消失せりの報」
平にはおば一家が住んでいた。水戸から平まで二十キロは離れているのに、紅蓮の炎がすぐ間近に思えた。電送は、約四万平方メートルが焼け、市民十六人が死んだ事実を伝えた。金成は翌日、父親の後を追い、おば一家を探しにいった。
「列車は大分混雑している。関東地区の空襲での見舞いなのだろう。下車、本通りへ出てみると、何とその間商店街を連ねていた家屋が焼け野原と化して只今尚消えぬ残り火、焼け残った屋根瓦、真っ黒に焦げている。
防空ずきんを被った人々は生気を失っていた。「これが連勝を重ねている国民の姿なのか」。疑問が脳裏をめぐる。

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