原ノ町駅開業と少年楽隊
明治31年4月3日原ノ町駅開設祝賀で少年楽隊が記念演奏
明治三十一年の原ノ町駅開業の時に、当時原町にあって活躍した少年楽隊がこの開業式で演奏した記念写真が見つかった。原ノ町駅は昨年、開駅八十八年を迎えたが、当時原町二少年楽隊が活躍していたこともあわせて当時の写真が保存されていたことは、歴史の一コマとして貴重な写真だと関係者に喜ばれている。
この写真は太田今子さん(76)が保存していたもの。
今子さんは、父親の甚四郎さんがその楽団のメンバーだったことを昔語りに聞いていたが、最近原町市二見町に住む佐藤嘉雄さん(80)が喜多屋旅館を訪問した折に、明治時代に佐藤さんの父親もこの楽団の一員で活躍し、原ノ町駅開設記念で演奏したことが話題になったため想い出し、アルバムを調べたところ、その時の写真が保存されていたことが分かった。
今子さんの父親で、この楽団の一員だった甚四郎さんは、自分の写真も勿論のことながら、家族の写真をたくさん撮っている。その中に明治時代の原町の様子を写した貴重な写真も多くあり、古き良き時代を物語るアルバムとして喜多屋旅館に伝わっている。
甚四郎さんは明治十七年生まれ。小さいときから音楽が好きで楽器は何でもこなした。晩年は邦楽の楽器を愛好し、尺八や三味線に打ち込んでいたほか、盆栽や盆景の趣味を楽しむつつ、昭和三十二年に七十三才で没した。
甚四郎さん十四歳の時に常磐線が開通して原ノ町駅が開業した。写真には甚四郎さんの弟徳太郎さんも写っている。
佐藤嘉雄さんの父親松太郎さんはこの少年楽隊の最年長でリーダー格だったらしい。
「私は明治四十年生まれなので、原ノ町駅開業の時の様子は分からないが、家の二階に父の使った太鼓やラッパなどがあったのは記憶にあります。」
と佐藤さん。
少年楽隊の制服は、松太郎さんが東京まで行って特別あつらえで作ったという。ほかにこのような楽団がなかったため、原町はもちろん、近隣の町村からも祝い事や祭りがあると引っ張りだこで演奏を依頼され、各所で演じたという。
あぶくま新報 昭和63年2月