大正2年7月26日福島民報
小高空前の賑ひ
磐城水電開業式
小高町なる磐城水電株式会社の開業式は既報の如く去る 廿三日迄執行したるが今其雑観を報ぜんに遠方よりの来賓者諸氏の休憩所には小松屋楼上を充て午前十時合図の煙火と共に来賓一同式場なる小高座にに臨場着席大島社長の開会の辞阿部専務の事業北国石部郡長大隅町長田村氏の祝辞功労者の表彰賞品授与等あり正午十二時式終り酒宴を催し余興には請負業者寄付になる組合芸妓の手踊数番あり中村原町小高芸妓酒間を斡旋し非常の盛会にて散会せるは午後五時頃なりし
▼ 式場の装飾 式場の桟敷には緑葉を差し連ね数百の電燈大小花電燈を以て時節柄清涼の気に富む装飾をなし遺憾なからしめたり
▼ 町内の装飾 町にては当開業を祝さん為め協賛会を設け当日未明より天をも割れん計りの大煙火絶間もなしに打揚げ町内には両端中央に三丈余の大緑門を建て其に三百余の大小花電燈を据付け又電気会社前空地には来賓引きも切らず芸妓の手踊り等ありて来観者の目を喜ばしめ又仙台より自動車を借受け来り町内を無量にて乗車せしむる等其設備甚だ宜しきを得たり
▼ 小高空前の人出 午後三時頃に到や大煙火の音と共に電気を未だ見しことなき老若男女袖を連ねて続々出掛け来る者実に数ぶるに暇なく町内至る所人山を築き通行にさへ困難するに至りたり
▼ 電気会社の装飾 会社の家屋には数百のイルミ子―ションにて祝開業と書ける大門を設け夜尚昼の如き有様なりき
▼ 小高座の大人 式場を其儘か借り受け開演したる東京歌舞伎一行は好期を利用して入場料を二割引となし五時より開演したる所非常の多い裡にして木戸締め切りとなり其の他同祝賀を見掛けて来れる各興行物及露店等の機を連ねて観客を呼び実に当町第一の賑ひたる野馬掛火の祭以上の盛況たり
▼ 小高町の前途 当町の盛衰は一に機業界の如何に依る事は人の知る所なるが一昨年頃は稍々衰へし機業界も昨今漸く引き合べく此順に行かば前途益々有望たらんとする機業其他の事業の起るを見るべく小高町の将来は大に意を強うするに足るものあらん(海川生)
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