鹿島町中村屋の疎開児童

131 七月八日
上林第一学寮内 神尾千鶴子様
中村屋旅館 渡辺治子
千鶴ちゃん無事に山都に着いたこと何よりですね
私しも元気で勤労奉仕にはげんでおりますから御安心下さい。千鶴ちゃんが鹿島の駅をたつとき千鶴ちゃんがどこに乗ったか分かりませんでした。ただ露木さん須々木さん越川さんが乗った所と吉田先生の寮にいく男の子の乗った所しかわかりませんでした。御免なさいね。
山都の方の気候はいかがですか
鹿島はこの二日雨ばかり降っております
疎開の子供がいってからは中村屋はもうひっそりとなってしまって家の人も皆んながいったのでがっかりしています
千鶴ちゃんが毎日となく通った鹿島もく国民学校には兵隊さんが来て表校舎には全々(※全然)生徒らしい姿は見受けられません
皆さんが朝となく夕となく眺めていた庭の景色もいつもとは違っておりませんただ「つつじ」の花が散り始めました、
お池の「こひ」もいつもすいすいと泳いでいます
桜田山も、青菜若葉につつまれ遠くもなく近くもなくそびえ真野川もいつもと同じにきれいにすんでいます
静江ちゃんも雪やんも元気できゃきゃと遊んでおります。上林亮が遠かった   ひどかったでせうね
そちらには雅子さんお葉書によればまだ遠くの山に雪がのこっているとの事はほんとうですか
鹿島はもう暑くて暑くて毎日半袖を着ています 私の顔には真っ黒でず姉さんも真っ黒で「はな」の皮がむけております
思ひ出せば千鶴ちゃんが金子寮母さんが叱られたことが私の頭にはいつまでも残っておりますあの時はにくらしかったわねでも千鶴ちゃんはおとなしいからにくらしいとは思わないでせうね
では弟の裕ちゃんにも宜しくね お元気で一生懸命友達にまけない様勉強してくださいね
可愛い千鶴ちゃんへ
中村屋旅館の封筒使用、便箋一枚

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