てれび拝見
○カタストロフという、ショッキングな記録フィルムを、ごたまぜにした映画を、ブルース・リーの「死亡遊戯」と一緒に朝日座で見たのはたしか去年の五月。
一年ぶりにテレビで(4・27)「カタストロフ」を見た。ヒンデンブルグ号炎上とか、サンパウロのビル火災とかあったが、奇妙な暗合で、ぶるっと身震いしたのは、ラストシーンが何と、あのスリーマイル・アイランドの原発であったこと。
そうそう。思い出した。映画のラストは、原発の恐怖として何処かアメリカの原発の風景が、なんとあのスリーマイル島のものとは、いやはや事実は小説よりも映画より奇なり。
原発パニックは、まさに現実のものとなった。折しも、米国にても「チャイナ・シンドローム」なるSFパニック映画が封切られていたとの由。
みぢかな場所に、日本最大の原発基地をひかえ、わが故郷はあまりビンカンな反応はなかったようであった。
旧年来、原発の話となると仲たがいになるほど是非を戦わす人が、このところ「ぶっそうなものが近くにあるわい。めいわくせんばんである」と、鼻息が荒い。
研究と開発、電力が必要であることは言うまでもないが、近くには来てもらいたくない、ということになりそうだ。東京のゴミ戦争みたいなものらしい。そのリクツは、原子力の安全性とか科学的コンキョとは、あまり関係ないようであった。
○再放送で「マンハッタン計画」を扱った「あの時、世界は」を見た。コリン・ウイルソンの「賢者の石」というSFを読み終えたあと、H・G・ウエルズの古典的SF、未来政治小説とでも言うべき「解放された世界」を呼んでいたのを中断して、テレビのスイッチを入れたのである。
するとなんと、原爆を作ったアメリカのマンハッタン計画の、そもそものはじまりとなったアイデアは、このウエルズの「解放された世界」という小説の中の原子爆弾がそれだというんだ。
サンリオというギフトカードを作って子供から金を巻き上げて成長している会社が、こんど本づくりをはじめた。本といっても、あげぞこの本と悪口をたたかれるおそまつなものだが、このSFだけはおそらくまだどこの出版社も文庫で出しているということがない。(古い文庫本はあるにはあるが絶版である)
意外なところに意外な本が出ている。ちなみに、このサンリオSF文庫の表紙に使われている紙に印刷されてのは、ごていねいにも、件のH・G・ウエルズがえがいたところの、かの有名なタコ型宇宙人なのである。
ところで一方、NHKも別に日本放送出版から番組のリライトを本にして出している。「あの時、世界は」第一巻をさっそく求めたのであるが、これがなんと実に下手な本づくりとしか言いようがない編集レイアウトで、テレビづくりとは違うドジリをしている。ギフトカード会社が、上げ底本づくりをしているのと別な意味で好一対である。
○プロメテウス・クライシスなるSFパニック小説が、朝日ジャーナルに連載され、単行本も出たが(徳間書店)、SFミステリーとして、二年前にNHKでラジオドラマとして放送されたことがある。原発が大爆発するという話だ。今の時期では、ちょっと冗談がきつすぎてしまうようだね。

注。相馬農業高校で現代国語の教員をしていた頃のガリ版の個人雑誌「芽月共和国」から。1979.4

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