なぜ情報は被災地よりもメデイアが先なのか

 南相馬が特別だったわけじゃないんだろうけど、本当に政府からの情報が来てなかったな。政府がテレビとか新聞でメッセージを出す前に自分たちのとこには情報が入ってないんだよ。警戒区域設定の時もそうだし、緊急時避難準備区域解除の時もそう。ホットスポットの特定避難地点もそうだし、全部政府が頭越しに報道機関に出していくでしょ。我々のところに情報、紙ベースでも、何でも来てないわけよ。全て唐突に新聞発表になっちゃう。
P64

 福島第一原発のトラブルは頻発していた

 東電が被災者にしてきたことはずっと逆のことばかり。お金さえ配れば少なくとも補償・賠償したかのようにやってきたじゃない。その結果、市民がどうなったか知ってんのかな。バラバラになっちゃったんだよな。お金なんかいくらもらったって満足しませんよ。あえてもう一度言うけど、今必要なのは、市民の心を取り戻すことで、立て直すことなんだ。一人ひとりに寄り添うことが一番大切なのに、何で156ページもある補償書を書けって暴力的な行為をするんだよ。それは加害者がさらに加害していくようなことだよと。勘違いするなって。
P85

原発基点の同心円による住民分断

 原発からの距離の同心円で単純に区分けすることがいかに意味のないことかがわかる。山側に入った高倉地区あたりは大体2・5マイクロシーベルトぐらい。でも警戒区域内に完全に入っちゃってる小高区の海側の町なんかは0・25くらいなんだよね。1ケタ違うのに、20キロ圏内っていう理由だけで、小高区には人が住めなくなってるわけ。
 何でいつまでも小高の人たちに仮設住宅に入ってもらわなきゃならんのか。支援活動やってる誘因が言ってたけど、年齢の高い人なんかは仮設暮らしが続いてるせいで、それまでは走ったり歩いたりしてた人が今じゃ這って歩いているっていうんだからな。することないから仮設でじっとしてるうちに筋肉なくなっちゃって。その辺を、考えていかないとな。警戒地区を法律的に規制しちゃったから、なかなかやっかいなんだ。
p138

闘う市長 被災地から考えたこの国の真実 
福島県南相馬市長桜井勝延
聞き手・社会学者 開沼博

2012年3月31日 徳間書店

https://domingo.haramachi.net/311minamisoma/闘う市長-2/

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