「ふくしまに生きる 福島を守る」
神に選ばれた男。齋藤圭巡査。相馬警察署の若い警察官は、あの悲惨な地震津波の大震災のニュースの中で、最初の明るいニュースとなった。それは、奇跡ともいうべきエピソードだった。この逸話を紹介するだけでも、本書は出版の意義があろう。彼は福島のいのちを守ったのである。
警察魂 相馬警察署 齋藤圭巡査
3月11日の東日本大震災を、私はJR
新地駅に停車中の電車の中で経験しました。
当時、私と同期の同僚は警察学校初任補習科の卒業式を終え、福島市内の警察学校から常磐線いわぬま経由で帰署途中でした。相馬署管内の最初の駅である新地町に入り「相馬に戻ってきたな」という気持ちが高まったところでした。
その直後、高まる気持ちを撃つ砕く巨大地震に襲われました。車両は左右に揺れが大きくなり、窓ガラスの反対側に見える新地駅の駅舎はまるで「こんにゃく」のようにしなっており、さらなる恐怖感をあおっていました。長い長い揺れがようやく収まった直後、私たちは二手に分かれ車両内の被害状況、負傷者がないかを確認してある気ました。車両内に異常はなく、その旨を車掌に告げました。警察官として何をやるべきか、とっさに頭に浮かんだことでした。人員の確認、負傷者の救護など、警察学校で訓練を受け、学んできたことが無意識のうちに行動に出ていました。
その後、大津波警報の情報を得た私は「このままでは津波に襲われてしまう」と判断し、乗客全員の命を確実に守るためには、ここから避難しなければならないと決断しました。当時、乗客には新地駅で下車する余予定の人はほとんどいなかったので、もし津波がなかったら乗客の皆さんに大変な迷惑を掛けることになるなど、正直不安な気持ちの方が大きかったように思います。
しかし、そのことよりも優先すべきことは「警察官として人の命を守ることである」という使命感と信念が、私の体を突き動かしました。
p18~19
2011年4月25日 (月曜日)
大震災で殉じた多くの警察官
4月24日(日)現在、2011年3月11日(金)の大震災で殉職した警察官23名、行方不明中の警察官は7名だと伝えられた。
殉職警察官は岩手8人、宮城11人、福島3人、 東北管区警察局1人の計23人。
ほとんどが、住民避難誘導中に津波に巻き込まれた殉職だという。
3月11日(金)14時46分、大地震から津波を予測した警察官は、直ちに、国民の生命を守るために、自らの危険を顧みずに海岸沿いの住民に避難を呼びかけるために、パトカーやバイク、或いは自転車や徒歩で、警察署から、或いは交番、駐在所から一早く飛び出したことであろう。
そして、「津波が来ます。高台に逃げて下さい。」などと、パトカーのマイクで、或いは大声を出し続けて、住民の避難誘導や救助活動に当られたことだろう。
本当は、自分も高台に逃げたい心境を抑えながらだ。
国民の中には、警察官なら当然の行為だという人が多いだろうが、この当然の任務を果たさない公務員、国会議員、企業・団体職員の輩が多過ぎる。
この警察官達の勇気ある行動と尊い犠牲で、どれだけ多くの一般市民が助かったことであろうか。
今となっては、彼らの命懸けの活躍を検証する資料や証言は殆どない。
岩沼市の鈴木和美さん(26)のような証言は貴重で数少ない。
まずは、殉職された警察官の方々に心からご冥福を申し上げたい。
■追加記事・・・・2011年5月17日 東日本大震災で住民の避難誘導に向かい、津波に巻き込まれた岩手県警大船渡署矢作駐在所の中津常幸巡査部長(50)の死亡を確認したと発表した。警察官の殉職は24人目で、依然6人の安否が不明となっている。
警察庁は19日、東日本大震災で殉職した警察官が、より多くの補償金を受け取れるための規則改正を決めた。従来の規則では、国からの支給額は最高2520万円だったが、規則の改正で上限が3000万円まで引き上げられる。
■岩手県で初めて「全国優秀交番」に選ばれた大船渡署の高田幹部交番も20110413k0000e040078000p_size5津波に呑み込まれた。定年退職で交番を離れる4日前だった所長の高橋俊一警視(60)ら警察官4人が殉職した。「ここからが俺の本当の仕事だ」。地震発生直後の3月11日午後3時過ぎ、交番前で状況をみていた高橋所長は、そう言って建物に戻った。生き残った部下の橋本大輔巡査(21)が見た最後の姿だった。
そして遺体は約1カ月後、陸前高田市の沖合で見つかった。
■福島第1原発の半径10キロ圏内を捜索中の県警機動隊員が15日午前、同県浪江町請戸の水田で、福島県警双葉署地域交通課の古張文夫巡査部長(53)の遺体を発見した。
■住民の避難誘導に向かい、津波に巻き込まれた福島県警双葉署地域交通課の増子洋一警部補(41)の死亡を確認したと発表した。殉職は23人目で、依然7人が安否不明となっている。
■仙台市若林区荒浜の交差点で、避難誘導中に殉職した仙台南署の交番に勤務する渡辺武彦巡査部長(58)=2階級特進=の指示で津波から逃れた岩沼市の鈴木和美さん(26)が5日、取材に応じ、「渡辺さんがいたから今の私がいる」などと涙ながらに語った。鈴木さんは海岸沿いを車で走行中に被災。警棒を振り回しながら声を張り上げていた渡辺警部に「内陸へ行け!」と言われたという。
県警のホームページで殉職を知った鈴木さんは
「助けていただいた命。悔いのないよう生きていきたい」と声を震わせた。
多摩湖畔日誌
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