SPEEDI活用されず 真相究明求める 浪江町長 国会事故調が会合 二本松
 国会の東京電力福島原子力発電所事故調査委員会の第十回委員会は二十一日、二本松市民会館で開かれ、浪江町の馬場有町長らが参考人として出席した。馬場町長は福島第一原発事故の発生当時、国や県、東電から連絡通報がなかった点や「緊急時迅速放射能影響予測ネットワークシステム(SPEEDI)」が活用されなかった問題の真相を究明すうよう求めた。

 馬場町長は原発事故発生後、国などから連絡を受けなかったと強調し「連絡・通信手段はあったのではないか」と疑問を呈した。その上で、東電に対し「歩いてでもこられる状況だtった。協定違反だと感じる」と語った。危機管理が希薄だったために事故が拡大したとも指摘し、国の責任で訓練する必要性を訴えた。
 SPEEDIについては「公開されていれば別の避難方法があった。真相を究明してほしい」と要求。原子力行政は規制と推進の部門を分けるべきとの見解も示した。
 委員会で避難自治体の意見を聞くのは、双葉町に次いで二回目。馬場町長も他、吉田数博町議会議長ら六人が参考人出席した。吉田議長は「住環境整備、雇用確保、健康管理などの問題がある中で、国が方向性を示さずに中間貯蔵施設や区域再編を求めるのは、われわれの思いとは違う」と主張した。
 二十二日は大熊町関係者を迎え、会津若松市で委員会を開く。

 住民から要望相次ぐ 意見交換会

 委員会終了後、委員と浪江町民との意見交換会(タウンミーテイング)が開かれ、町民から医療態勢の確保、原発事故の原因究明などを求める声が相次いだ。町民ら約百八十人が参加した。医療面では「被曝した人の医療費を無料化する必要がある」「被曝医療チームを圏内に設けてほしい」など健康管理に関する要望が続いた。事故関連では「事故の責任の所在を追及すべき」との訴えや、「一年が経過し、都会との温度差を感じる」と被災地と首都圏の「距離感」を指摘する意見も出た。
 委員からは「国や県が県工管理手帳を作り、責任を持って見守る制度を整えるのが良いと考える」「事故は人災の側面が大いにある。原因を究明する」などと発言があった。委員を務める蜂須賀玲子大熊町商工会員は「皆さんのつらい気持ちは私が一番分かっている。訴え続けている」と語った。
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 終了後、黒川清委員長と蜂須賀委員が記者会見した。黒川委員長は「被災者の生の声は防災、避難、被曝対策など安全確保の視点がなければ原子力の安全はありえないということを突き付けて。官邸、霞が関と国民の距離はまだまだ遠いと感じた」と述べた。

区域再編の協議入り 賠償などの明示前提
浪江町長あらためて強調
 馬場町長は終了後、記者団の取材に応じ、政府が損害賠償や除染、ライフライン復旧などへの対応を明示しない限り、避難区域再編に向けた協議に入らない姿勢をあらためて強調した。
 馬場町長は「区域見直しの前提として、損害賠償や除染、ライフラインなどの問題がある。セットとして政府がどうするか明示しないと協議には入れない」と語った。除染については「(年間積算線量を)一ミリシーベルトまで下げる考えが政府から出てこなくなった」と指摘し、一ミリシーベルトに低下させる技術や期間を示すべきとの考えを示した。
 事故調査委員会に対しては「事故原因をしっかりと究明してほしい」と求めた。関西電力大飯原発3、4号機の再稼働問題については「事故を検証している段階で、再稼働すべきではない。議論の対象外」とした。
民報

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