25年後の福島 チェルノブイリ事故調査団
川内の遠藤村長と三瓶町議。
下 交錯する帰還への思い
除染の現実
汚染された建物や土壌などから放射性物質を取り除く「除染」。福島では復興のキーワードとなっている。水を使って建物の屋根や壁を洗ったり、表土を削ったりするが、思うように効果が上がらないケースもあり、高濃度の汚染地域を除染しようとすれば、莫大な費用と労力、時間がかかる。チェルノブイリ原発事故ではどうだったか。
「学校や幼稚園など人が集まるよな場所では除染を行ったが、森林の除染は行わなかった」
ベラルーシの放射線学研究所を訪れた福島県の調査団に、担当者はにべもなく答えた。
チェルノブイリ原発周辺を歩くと、住民が避難した村は建物が放置されたまま。放射線の影響で変色した森林の木は伐採され、その場に埋められてはいるが、線量は依然として高い。
ウクライナの放射線医学研究所の担当者は、「原発の南側で汚染の程度が低くなったというところもあるが、原発から10キロ~15キロ圏内は今後も人は住むことができないだろう」。25年経過しても事故の爪痕は具核残る。
「ウクライナ、ベラルー基本的には除染しないようだ。ものすごく広大な原野で、見渡すかぎり林と大草原。日本と地理的な条件が全然違う。住宅の除染とは壊して埋めることだ」
そう受け止めたのは、調査団長の清水修二福島大学副学長。現地の除染のやり方を福島にそのまま当てはめるのはむずか数。
調査団の一人、「全村避難」している川内村の遠藤雄幸村長は現地調査を終え、帰還への思いを新たにした。川内村は比較的線量が低く、村内の除染も始まっている。
一方、同じく調査団の浪江町町議、三瓶宝次さんは「町ごと集団移住」への思いを強めた。
浪江町は警戒地区と計画的避難地区に指定され線量の高い地区が多く、住民のほとんどが避難している。
「除染も、山林も含めて町全体をやろうとすると20~30年はかかる。帰還は無理な話だ」と三瓶さん。「住民からは帰れないのであれば早く方針を示してほしいとの声が上がっている。2年以内に方向性を示さなければならないだろう」
帰還か、集団移住か。除染の実態を目の当たりにして、2人の思いが交錯した。
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