【仮の町】 識者の目 福島大 経済経営学類教授 清水修二さん ”きずな職員”の配置を

 避難区域がある市町村の帰還は進まず、仮の町についての議論は進んでいない。世界の事例などを踏まえ、帰還までの課題や提言を福島大経済経営学類の清水修二教授(64)に聞いた。

 −避難する自治体の復興に向けた考え方は。
 「基本的には”選択””自立””調整”がキーワードとなる。生活する場所を選ぶのは、住民の選択を優先する必要がある。本来なら帰還や移住は強制できず、住民の意思が最大限尊重されるべきだ」

 −チェルノブイリ原発事故の際はどうだったのか。
 「ウクライナや、事故の影響を受けた隣国のベラルーシでは”避難”という考え方ではなく”移住”だった。汚染地域に指定された住民は移住させられた。家も土地も国有だったため、国が用意した土地家屋に住んだ」

 −福島の参考になるか。
 「日本は私有の土地が多く、当てはまらない。帰還する場合、元の場所に戻ることにこだわると時間がかかる。生活可能な土地を一時的に国有にして、帰還を進めることも一つの案だ」

 −それまでに必要な「仮の町」の考え方は。
 「仮の住まいで暮らす避難者に生活拠点をつくることは必要だ。避難者のうち、今までの場所に住むことができないと考えている住民には、セカンドタウン(仮の町)を設ける。そこに生活する人に除染の進捗(しんちょく)具合や集会、イベントなどの情報を随時提供していく。そして条件が整った場合、それぞれの判断で戻る方法もある。さらに、全国各地に散らばる避難者のため、避難先に情報やある程度の住民サービスを提供できる”きずな職員”を配置することを提案する。そして、条件が整い、帰還できる時期を待つ。孤立させないようにすることが必要だ」

 −行政のシステムは。
 「仮の町には、1つの自治体に2つ以上の自治体が存在することになる。広域行政組合のような組織をつくることで解決できるのではないか。それぞれ連携、調整ができる」

 −避難先では、受け入れ側の地元住民と避難者の間にあつれきが生じていることがあるという。解決策は。

 「一部だと思うが、とても悲しいこと。受け入れ側には避難者の状況、思いを理解してもらうことが大切。一方、避難者は賠償だけに依存せず、自立することも必要ではないか」

 しみず・しゅうじ 東京都台東区出身。京都大大学院経済研究科修了。昭和55年に福島大経済学部の助教授となり、平成20年4月から平成24年3月まで同大副学長を務めた。専門は「地方財政論」「財政学」「キャリア形成論」「原子力災害と地域」など。平成23、24年にウクライナのチェルノブイリやベラルーシなどを訪問した。双葉町復興まちづくり委員会の委員も務める。

(2013/03/05 08:00カテゴリー:震災から2年)民報

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