自然豊かな大地も清流も、きれいな空気さえ依然として放射能で汚されたままの福島県の帰還困難区域。加害者の東京電力と国の罪、責任は重く深い。国は避難指示をするだけで、この5年間、住民が戻れる対策を何もとってきませんでした▼「国はわれわれの生活が再開できるよう森林の除染をすぐにやれ。遅くなるほどふるさとの再生は遠のく」。自民党浪江町議6期の重鎮、三瓶(さんぺい)宝次さんの言葉です▼生まれた浪江町津島地区で、国と東電を相手にした「ふるさとを返せ 津島原発訴訟」を呼びかけました。住民みずから立ち上がらないと生活の再建と地域の再生はできないと。「国の不作為で不要に被ばくさせられた。将来への不安もある」▼事故直後、津島の住民が着の身着のまま避難してきた沿岸部の町民を助けていたときでした。放射線の被ばくに備えた白い防護服姿を何人もみましたが、「何も指示しなかった」。原発事故によって放出された高濃度の放射能が津島地区をのみ込んだことを国は知っていながら、浪江町にその情報を知らせなかったのです▼国と東電が奪った津島の様子は、テレビ番組のDASH村でしっかり描かれています。三瓶さんが土地を提供し、妻は「漬物名人」として出演しました▼同じ自民党でも、「最後は金目でしょ」との失言で環境相を辞任した人物を再び入閣させたアベさんには、わかるまい。金銭じゃない、お金を払ってもあがなえない価値あるもの―ふるさととそれを取り戻すあきらめない正義が。

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