浪江町民約1万5000人が東京電力福島第一原発事故に伴う精神的損害賠償の増額を求め、原子力損害賠償紛争解決センターに申し立てた裁判外紛争解決手続き(ADR)で、同センターは6日、和解仲介手続きを打ち切ったと発表した。センターによると、集団申し立てでの打ち切りとしては過去最大規模。協議は約5年に及んだが、センターが示した賠償を一律に上乗せする和解案を東電が受け入れなかった。
同日、センターから「和解仲介手続を打ち切る」とする文書が町に送付された。文書は5日付で、「被申立人(東電)より和解案について受諾できない旨の連絡があったことなどから、これ以上和解仲介手続を継続することは困難」としている。
町民の約7割が申し立て、町が代理人になっていた。馬場有町長は「避難者に寄り添うどころか、突き放しているとしか思えない残念な結果だ。東京電力には原発事故の原因者、加害者としての意識がひとかけらもない」とのコメントを発表した。町支援弁護団も声明を発表し、町と共に東電、政府の対応に改めて抗議する考えを示した。
町は今後、町民や議会、弁護団などと協議し、集団訴訟も含めた対応を検討していく方針。
一方、東電は「申立人全員に対し一律での賠償を行うのは困難。今後とも個別の請求ごとに対応していく」としている。
町は原発事故後、正確な情報が得られず、風向きの影響で高線量地域となった町内の津島地区に避難。町特有の被害だと訴えていた。
文部科学省の原子力損害賠償紛争審査会は中間指針で精神的損害賠償額を月10万円としたが、町は被害実態が反映されていないとして2013(平成25)年5月、月額25万円の増額を申し立てた。これを受け、センターは2014年3月、5万円(75歳以上はさらに3万円)を上乗せする和解案を提示した。しかし、東電は「この和解案を認めると浪江町だけでなく広域的に影響を及ぼす」などとして拒否。センターは「(東電の姿勢は)理解し難い」と異例の批判も交えて和解案受け入れを促したが、折り合わなかった。
避難生活の長期化を考慮し、2017年2月に80代女性1人のみ和解案通りの和解が成立している。
センターによると、和解申し立ては昨年12月末現在、累計2万3215件で、このうち100人以上の集団申し立ては88件。約75%に当たる1万7548件で和解した。和解に至らない打ち切りは1671件、取り下げが2179件などとなっている。
【浪江町原発ADR申し立てに関する経過】
2013(平成25)年
5月29日 浪江町が町民を代理して集団申し立て
2014年3月20日 仲介委員が「和解案提示理由書」
5月26日 町・弁護団が和解案受諾を表明
6月25日 東電が和解案拒否を回答
9月17日 東電が和解案拒否を回答
2015年2月23日 東電が和解案拒否を回答
5月20日 東電が和解案拒否を回答
12月17日 仲介委員が「和解案受諾勧告書」
2016年2月 5日 東電が和解案拒否を回答
11月15日 東電が高齢者1人について和解案通り受諾回答
2017年2月 高齢者1人について和解成立
6月 8日 仲介委員が他高齢者も和解案通りの和解勧告
2018年3月26日 東電が和解案拒否を回答
4月 5日 仲介委員がADRを打ち切り
(2018/04/07 11:54福島民報)
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