蝋燭一本で持ちこたえている教室に戻ると、携帯を手に何度か外に出た。一体なにが起こっているのか、とにかく情報が欲しかった。いくら試しても、やはりメールの通話もネットも使えない。校庭には、避難してきたのだろう、百台近くの車が並んでいた。停電のせいで、星が恐ろしいほどよく見えた。オリオン座が、図形の内側に含んだ等級の低い星までくっきりと光っていた。
繊細な星空に目を奪われた後、なにげなく海の方向を見て、鳥肌が立った。
なにもない。そこが診ずなのか地面なのかすら分からない、平坦な闇がどこまでも彼方まで広がっていた。同じ病でも、例えば夜の海を見たときの感覚とはまったく違う。だって、そこには、住宅地があったのだ。電車が通り、たくさんの車が走って、商店がつらなっていた。そこにつらなっていたのは、血の通った人間の町を根こそぎ千切った後に残る、目が潰されるような暗闇だった。数秒間なにも聞こえなかった。何も感じられなかった。寒くて寒くてたまらなかった。我に返り、私は携帯を閉じて足早に教室へ戻った。
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