相馬市のリカコさんは、家の人が車で助けに来たので分かれた。次に助けてくれたのがショウコさんという女性だった。
電車に乗り合わせていた一人だった。
「せめて女の子だけでもうちにおいで。うちも地震であちこち壊れてるみたいだけど、寝るところはあるから」
ショウコさんの家は、相馬市よりもさらに南下した南相馬市にあった。弟さんの車に乗せてもらって真っ暗な市街を通り抜ける。道路のあちこちが陥没し、どの車も赤いポールコーンを目印に蛇行しながら走っていた。避難の際に乗り捨てたのか、路肩に停められた無人の車も多い。時折、停電を免れたらしい地域を横切った。電力の供給がまだらになっているようだ。
彩瀬まるは、二日目と三日目を原町のショウコの家で過ごした。
三月十二日
夜中に何度か余震で目覚めたものの、電灯の紐が揺れる程度だったので気にせずまた目を閉じた。
午後四時前、不思議な防災放送が入った。柔らかい薄曇りの空へ、スピーカーで拡大された女性の声が響く。
『福島第一原子力発電所で爆発事故が起こりました。住民の皆様は屋内に隊秘史、窓を閉めて、外出をお字変えください』
三月十三日
頭の中が重だるく、起き出すのがつらい朝だった。昨晩はごとんど邊蒸れぬまま、余震に揺さぶられるたびに目が覚めた。見知らぬ家の天井に、地震、津波、真っ暗な中学校、原発、二十キロを示す地図の線、と現実感を伴わない景色が流れる。出口のない悪夢をぐるぐると歩き回っている気分だ。
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