悲しきムラ社会 川内村長選挙違反事件 民主主義が泣く日本の政治風土

 カエルの村として有名なあぶくま山中の川内村長選挙で、現職と新人の両派から買収の逮捕者が出た。村長の義理の妹が六月二十四日の初公判で起訴事実を全面的に認め、村長派の元商工会長の論告求刑では「高額の現金で票を買おうとした行為は悪質。自分の会社の既得権益を守ろうとした動機に酌量の余地はない」と、懲役六か月が求刑された。渦中の川内村からの深層レポート。

 双葉郡めぐる一般状況

 日曜日午後のクイズ番組「アタック25」でのこと。パリ旅行の商品をかけて、全国から知識自慢たちが集まってくる。
 出題が読まれる。会場は静寂。
 「国内最大のサッカーコートを持つナショナル・トレーニング・センターができるのは何県?」
 回答者はみな考え込み、沈黙。
 ブー。時間切れのブザーが鳴って、全員が答えられなかった。
 「答えは福島県です」
 ほんの一分足らずの場面だったが、ショックだった。
 これだけサッカー熱が高まり、乗り遅れるな、とばかりに福島県内で議論された結果、地域振興の決めてとしてゴーサインが出され、県と地元自治体に県下の代表的大企業が雁首を並べ、Jリーグとも足並みを揃えてスタートしたはずのナショナル・トレセン。だが、クイズ回答者が誰も知らないという現実のショック。
 しょせん、原発増設の飴玉として提示されたアイデア。県内でこそ地域活性化の切り札になると喧伝されたが、全国規模のニュースにはなっていない現実をいやというほど思い知らされた一瞬であった。
 第三セクターのトレセン会社がスタートしたのも東京での話。地元軽視だ、地元負担が重すぎる、と地元自治体が今頃になってゴネるのもわかるような気がする。
 スーパー施設をつくってもらうのはいいが、道路や下水処理など周辺整備には巨額の費用がかかる。
 広野町議会では、お国のためとはいえ、タダで用地を使ってもらうほど寛容な対応はできないとモメたが、このほどようやく決着した。
 最近では阿武隈地域に住んでいないといわれたクマの姿が、広野町で目撃されている。手つかずの自然が残っている証拠なのだろう。
 楢葉町は地理的にも地脈的にも恵まれた町である。
 大熊町では六月十五日、文化センターで原発フォーラムが行われた。
 富岡、双葉両町と並んで、原発城下町と評される大熊町で、国が主催しての「原発立地地域との率直な意見交換」をねらっての地域フォーラムだ。
 質疑応答自体は、耐震安全性をめぐって、かみ合った議論にはならなかったが、科学技術庁では今後も継続的にフォーラムを実施する予定。
 双葉郡をめぐる社会性あるニュースといえば、右のようなものくらいで、原発を中心に、ナショナル・トレセンの問題で、地域開発の本質を見据えようという傾向にある。
 「政経東北」1996年8月号。

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