わがクリニックは、看護師が総勢で9名います。医師はひとりだけ。お助けのアルバイト医師が医大病院から一人づつ二週間間に一度づつやってくる。お小遣い稼ぎに配意し、現場は勉強になる。週に一度は,院長が病院の外へ営業に出られるから、みんな万事にウインウインでマルク収まっている。
それに、クリニックの効率というものがある。規模と、人的パワーと、医師のローテーションのほかに送迎の運転手のこともある。結構皆フル稼働して大変なのだ。一番楽して寝てるだけのように思われるが、地震とか原発事故があったりすると、一番先に死ぬのは透析患者だ。
実際、10年前のアノ地震と津波で、一番先に死んだのが透析患者である。しかも、バタバタと死んだ。
あっけないほどよく死んだ。
みんなは知らないだろうが、3・11で、翌朝の朝刊で記事を食い入るように読み漁ったのは、みんな自分に関係のある分野の記事であって、すべてではない。
たとえば、一面では首相や東電の社長や会長や、原子力規制委員会委員長や、IAEAの日本人理事とか、世界を変えた100人の桜井市長とか、福島県の浜通りの家をなくした被害者や原発事故で屋内退避させられて食料も水もない家もない人々を凡て新潟が引き取る、といってくれた新潟県知事とかが出る。
NHKの科学解説委員水野さんとか、毎日テレビに出る。それから「AC」って、CMの代わりに出る。
僕は何みてたかって。社会面の下の方の、三陸のばらばらの町村が津波で寸断された道で、隣の大きな市まで逃げられずに、次々に死んでいった透析患者のことです。
東京の病院までたどり着けなくて死んだ患者なんかもいた。
南相馬市のぼくの恩師は、二週間透析できずに死んだ。
ほんとによく死んだ。ばたばたと死んだ。
次は俺の番なのですか神様と、それしか見えないんです。