工場への避難という苦渋の選択
サンライトおおくま 原発から2キロメートルで起きたこと
 施設長・池田義明
 福島県浜通り中部に位置する大熊町。福島第一原発の立地地である大熊町には、多くの東電職員や下請け会社の職員が住居を構え、海沿いにある原発は大熊町の風景に溶け込んでいた。町の中心部から少し離れた丘の上に、林に囲まれ、白い壁にえんじ色の屋根を載せた特別養護老人ホーム「サンライトおおくま」がある。福島第一原発までは直線距離で約2キロメートル、高台にあるため、利用者が集まって食事やお茶を楽しむ食堂からも原発に立つ白い巨大な煙突(発電所施設の排気塔)の先が木々の向こう側に見える。
 午後10時、初めて町の職員数名が施設を訪れた。「町の避難所へ避難しないけない」というが、池田は「こんな寝たきりの高齢者を連れて行ける状況だと思っているんですか? ここにいたほうが安全でしょ!」
と断った。町職員も特に説得や状況をせつめいすることなく帰っていった。その30分後、町の消防団員と別の町職員が訪問した。玄関先には3台の大型バスが止まっている。突然のバスの到着に何の知らせも受けていない池田は眉間にしわをよせた。
 「総理大臣の命令で原発から3キロメートル圏から出ろといわれています。とにかくバスに乗って出てください」
と町職員は言った。
 総理大臣命令が出るほど危険な状況なのか?
寝たきりの利用者を移動させるのは危険だが、国の命令であれば従うほかない思った。日付が変わるころには、全員がバスに乗り込み原発から約5キロメートルに位置する大熊町保健センターに向かうことになった。
 国道沿いへとにかく西へ西へと進んだ。

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