〇朝日座が復活 平成4年  昨年(平成3年)九月三十日をもって閉館した朝日座が、また復活する。といっても春秋の子供アニメ映画の上映時だけ。相双地方唯一の映画館の閉館は、地域の人々に時代の流れに対する感慨を誘ったが、実質的には黄金時代にテレビよりも娯楽の中心だった映画を、かんじんの大人が利用しなくなったこと、生活様式の変化で娯楽媒体がテレビやビデオに移ったことが背景。ところが閉館で最もショックを受けたのは子供たちだったかも知れない。相双地方の子供たちから「これからは、朝日座で見られないのでは一体どこで見ればいいの」という素朴な声も出ていたのも確か。  最近の日本映画の興行ベストテンは、子供アニメがトップ。昨年一年間の日本人一人当りの映画館への動員数は1億4000万人で、国民一人が映画館で映画をみるのは年にたった一度だけ、という数字。そんな中で、テレビマンガの主人公が映画館でも活躍するため、アニメマンガだけは子供たちの支持を受けて人気を保ってきた。  若者たちが、これまで以上にいわき市や仙台市まで映画を見に行く傾向になっても、交通の便のない子供たちにとっては親に連れて行ってもらわなければ映画も見られない状態。ますます田舎の町に愛想をつかして都会へ流出する「原因」が増えたかも知れない。ところで閉館から四ヶ月、映画配給会社から朝日座社長の布川雄幸さんの所へ「子供アニメだけは上映してくれないか」と声がかかった。  「困った。キッパリと閉館した後で、今さらまた映画の上映をするのも未練がましいようで、悩んだのですが」と、映画復活の状況を前に布川さんの思いはまた揺れた。「ただし子供アニメだけです。春と夏休みの恒例のマンガ映画を楽しみにしている子供たちのため、と言われればやらない訳にはいかない」と、映画配給会社からのお声がかりに困惑気味ながらも本心は嬉しそう。「さいわい体も健康だし、携帯用の三十五ミリ映写機もあることだし、出張映画も可能。子供たちの夢に応える意味で、年に二度だけは相双地方でアニメ上映することにした」と語る。  原町市では朝日座で三月二十日から二十九日まで。相馬市ではワゴン車に映写機、トランス、スピーカー、アンプを積み込んで三月十五日に相馬市民会館で上映する。  一方、布川さんが昭和二十七年から定期購読してきたキネマ旬報のバックナンバー約九百冊の蔵書は、宮城県柴田町に寄贈した。朝日座で映画の仕事に就く以前までは宮城県職員として勤務していたという因縁もあり、貴重な資料として保管されることになった。柴田町の平田博町長は父親が映画館を経営していたこともあり、大衆文化の資料館として建設中で来年オープンさせる「ふるさと文化伝承館・思源閣」に特別の映画コーナーを設けていたため渡りに船とばかりに柴田町への寄贈が決まったもの。 (平成4年・あぶくま新報)
平成5年(1993) 〇チャリティー映画会  二十八日、サンライフ原町で原町市老人会連合会(松野栄吉会長)の主管によるチャリティー映画会が開催。上映作品は「男はつらいよ寅次郎の青春」「釣りバカ日誌5」の人気番組二本立て。浜通り地方は常設映画館がなく、映画ファンは新作映画鑑賞に仙台、いわき、福島方面に足を伸ばさねばならないが、身近な会場で全国封切り映画を楽しんでもらおうと、松竹株式会社と平東映映像事業部の主催に地元の旧朝日座社長の布川氏の協力で今回のチャリティー映画会が実現した。  布川社長はこのほど新たに布川教育映画社を設立。常設館の閉館の後も、要望の強い健全娯楽の映画上映については全面的に協力したいと意欲を燃やしており、昨年は「遠き落日」「紅の豚」などの超人気映画を地元で上映。映画への情熱は衰えない。  老人会の組織をフルに利用して市連合会では、新作映画を楽しんでもらい、その収益の一部を社会福祉協議会に寄付することにしている。入場料は八百円。(平成5年1月28日あぶくま新報)

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