昭和53年 「火の鳥」ロケ
51年のNHK「風と雲と虹と」ロケに続いて、「火の鳥」が原町でロケされた。(昭和53年6月26日民報) 〔東宝映画「火の鳥」のロケは二十四、二十五日の両日、原町市一帯で行われた。映画は、古代ヤマタイ国を舞台にしたもので、手塚治虫の原作を市川崑が監督、八億円を投ずる超大作。制作は四月初めからアニメーションをまじえて開始した。八月中旬会開される。テーマ音楽は「シェルブールの雨傘」のミッシェル・ルグランが作曲、ロンドン交響楽団の演奏、出演者は若山富三郎、仲代達矢、草刈正雄、田中健、江守徹、林隆三、加藤武、大滝秀治、伴淳三郎、小林昭二の男優陣に、高峰三枝子、草笛光子、由美かおる、大原麗子、風吹ジュン、木原光知子の女優陣、それにカルーセル麻紀、ピーターの華麗なキャスト。ナギ少年役には全国二千六百三十人の中から選ばれた尾美トシノリが扮する。 /相馬野馬追いの原町市は「天と地と」「風林火山」のロケで有名。二十四日は畦ケ原で朝早くから中ノ郷騎馬武者五十人と、野馬追い出場の”馬”五十頭がエキストラに駆り出され出演した。/午後は荒野をゆく騎馬隊、軍列の最後尾には、首になわをかけられ、大きな荷物を背負わされた若山富三郎扮する猿田彦、由美かおるのウズメ、尾美トシノリのナギが歩くシーンを撮影した。/二十五日は渋佐浜で軍船のシーンなどのロケを行った。/このロケを一目見ようと見物人が押しかけ、Tシャツにまでサインを書いてもらうファンもいた。〕  しかし、実写とアニメの合成は素人目にも成功したとはいえず、実験的試みは散々。後年、FM放送で市川監督の座談を聞く機会があったが、監督本人も「あれは失敗作だった」とみとめていた。アニメーションと実写との合成技術が未熟なレベルだったためだ。
 昭和53年 黒澤明、原町に来る
「巨匠、黒沢明監督」が「原町でロケ候補地を視察」したことがある。(昭和53年9月9日民報) 〔映画監督の黒沢明氏が六日、原町市を訪れロケの候補地を視察した。今回の作品の内容は十四、十五日ごろ東京で記者会見して発表することになっているため明らかにされていないが、風林火山の二、三年後が題材で、武田信玄が死んだのを秘密にし、影武者を仕立てて大合戦を行うシーンのロケとみられる。  原町市は相馬野馬追発祥地でよろいや馬があるため、これまでにも「天と地と」「風林火山」のロケ地に選ばれている。黒沢監督は原町市役所を訪れ、鈴木功助役に協力を要請、宮川カメラマンも同行、佐藤市観光係長の案内で市内大原、畦原、飯舘村小宮、蕨平ほかを回ったが、同村臼石の大火山牧草地が有力だという。  二百から三百の騎馬武者を縦横にかけめぐらせる大合戦シーンのため、七日も各地を見て回った。/なお、映画は東宝系で来年五月上映される予定になっている。〕  惜しいかな、この作品「影武者」のロケは、原町市では行われず、黒沢作品の舞台としてはロケハンのみ。幻のロケーションとなった。

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