原町公民館がお断り 原爆記録「にんげんをかえせ」上映
強い政治色理由に 自費購入の教師は反発
朝日 昭和57年4月14日
反核運動は世界的拡がりを見せているが、県内でも、米国に保存されていたヒロシマ、長崎の未公開原爆記録映画フィルムを編集した「にんげんをかえせ」を上映する動きが高まり、双相地区の煌煌供試グループが、原町公民館で映写かいを開こうとした。ところが「政治色が強く、利用は認めない」と断られてしまった。十三日、やむなく原町高で生徒と教師だけを対象にして映写かいを開いたが、供試らは「原爆のいまわしい体験を繰り返すまい、という市民運動なのに、どうして公民館が使えないのか」と、あきれながらも憤慨している。
中澤正良公民館長(五七)は「映画の詳しい内容は知らないが、原爆の恐ろしさばかりが協調されて、核の平和利用といった面が描かれていないという。これでは公平を欠くし、県内の上映例を見ても、(映画上映に)役所がかかわることではないと判断した」と、思想的色合いが濃いことを不許可の理由に挙げている。
これについて、山崎教諭は「反核という一点で集まった市民運動の芽を摘む行為だ。本来なら社会教育施設である公民館が率先して上映すべき映画なのに」とざんねんがっている。
この日の上映会は、原町高の視聴覚教室で行われた。昨年の文化祭で、原爆写真展を開くなど、核問題に関心が高く、この日も約百三十人の生徒が詰めかけ、二階にわたって上映した。
生徒たちの中には、途中からうつむいたいたり、声をあげて泣き出す姿も多く、原爆の恐ろしさを実感した様子だった。

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