教会でみたキリスト教映画

 キリスト教会で上映された映画もある。
「世界的教育二大名映画公開」
〔世界的二大名映画クリスタスとクオーレを公開することになって目下準備中であるがクリスタスはキリストの一生を最も平面的にそして興味豊に詩的化した芸術映画で作製は伊太利チネス社でキリストに扮せるパスタワーク氏苦心の作又クオーレは愛の学校と云はるる教育映画で単に少年少女に深い感動を与へるのみでない青年にも壮年にも更に老年にも最も強い感動を与へるものである猶此映画は〕
〔△廿五日原ノ町〕(昭和4年5月13日)と日程の中に、原ノ町も組まれている。劇場での上映らしい。
昭和7年8月21日民友に「中村基督映画」という教会消息を伝える記事がある。〔中村基督教会では二十一日午後七時半より同会聖堂に於て伝道活動写真会を開催するが入場無料で一般の来場を歓迎すると〕
中村教会での映画会について、昭和初期の回想を同教会の長老信徒鎌田昌次郎氏が書き残している。(中村教会90周年記念誌)
〔或るクリスマスの時、九ミリ半の映写機を持って行き、当時有名だった「クリスタス」というキリストの生涯の映画を見せた。その頃は珍しかったので多くの大人も集り、部屋に入り切れず寒いのに外に群がって大騒ぎとなり、取り静めるのに一苦労したことがある。〕
同じ時代だが昭和6年6月には川俣町の川俣座で川俣教会の教会堂建設資金造成のための映画会で「キリスト伝」を上映したという記録がある。中村での基督映画会の「クリスタス」と同様のもだろう。
原町(日基)教会でも、映画会が行われたことがある。昭和10年5月18日民報の「原町短波」というコラムに次のような記事がある。
〔幸町通り原町役場東隣の日本キリスト教会ではお子供衆に為めになる活動写真を十八日(土曜)の晩に見せるようになった
/お金はいらないみんな入らしやい〕
気さくな語り口調で記されたこの記事は警察ネタ、行政ネタ、政治ネタのど真ん中にあるが、筆者は大田村出身でカリフォルニア帰りの佐藤一水(安治)。当時は、トーキーが出現する頃で、ほとんどの映画はサイレント(無声)である。だから弁士が説明した。映写機械は中村で使われたものの使い廻しかも知れない。当時の映写機械としては九ミリ半という機械が一般的であった。教会で上映された映画は信仰にかかわる伝道を目的とした内容だったろうが、弁士には牧師か長老か説明に弁舌をふるったことであろう。
クリスチャン町長だった佐藤政蔵の長女片野桃子も、教会での映画上映をみた。キリスト伝である「クリスタス」のストーリーを覚えている。また原町の劇場で「イントラレンス」をみたことがある、という。「イントラレンス」(グリフィス監督)は、アメリカ映画の記念碑的な大作で、大正の公開以来県下で何度も上映された。
片野桃子は妹青田秀子との座談の中で「大尉の娘」にも言及している。原町で初めて見たトーキーの作品は水谷八重子主演の「大尉の娘」だという。昭和5年の発声映画だ。

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