久しぶりに歌うことの嬉しさもあって、本当に心嬉しく楽しいことでした。第一日目のメッセージは「日本の神とキリストとの違い」でした。今迄、天皇を現人神として、また八百万の神を信じさせられてきた私たちにとって、そう簡単には受け入れ難いものがあります。その夜は、ただ美しい音楽を聞いてよかった位の気持ちで家に帰りました。姉は「もう行かない」と言いましたが、私は「納得ゆかないから、あす反発してくる」と大変高慢な気持ちでした。床についても、明日何を質問しようかと案を練っていました。そして翌七日の夜、私は一人で出かけて行きました。
今日は質問してやろうという反発心に燃えている私は、昨日とは打ってかわって恥ずかしさもなく堂々と前の席に座を占めたのです。昨日同様、アコーデオンの音は心よく響いていましたし、相変わらずやさしそうなホレチェック師の態度に魅せられていました。二日目の話は罪の話でした。それ迄罪人とは盗人、殺人等と自分には無縁なことと思っていた私は、牧師の「日常生活の中で平気でやっている嘘、悪口、怒り、疑い等をもつ身です」との話に、「それなら私だってやっている」と、その話に耳を傾けだしました。話が終わる頃には、自分も罪深い者、牧師の語る罪人だという事が解ってきました。今迄の高慢な気持ちはあとかたもなく消え失せ、自分の中にある罪を認めざるを得なくなり、その罪を取り除く方こそキリストなのだと話を聞いて家に帰りました。
p128半谷昌「ナルドの壺」
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