葉巻ゆるやかに燻らしならが典雅なる趣味を物語り人類の愛を説く文明的教育を受けた紳士ですらも一旦戦闘となるや瞬時にして虎や猿に寸分も違わない猛悪残忍な心となって剣を握り銃を執り而して血まみれの争闘をも敢て辞さないのであります。
 噫之が見苦しい人間本能性の暴露であります。さもしい人類野獣性の暴露であります。
 国際連盟等に依ってあるひは将来の世界に於て武器の争闘の絶無を期する事は必ずしも空想ではいかも知れません。
 かく論じ来りますると我々はパンのために土のために永久に闘はなければならぬといふことは火を見るよりも明な事実であります。若し我々は此争闘を辞したならば我々は永遠に人生の墓場に埋没されなければなりますまい。永久に敗者の悲哀に泣かねばなりますまい。私は此処に於て争闘は永遠なりと叫びたいのであります。
 斯の如く我今日彼を打たずんば彼明日我をう打つべしといふ時代にあたって一国の民族に何等の定見なく只一時の平和に安逸の夢を食ってをるとしたならばどうでせう。其国民の将来こそ甚だ危まざるを得ないではありますまいか。

つづき
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