高倉健と田中裕子の主演で、2001年に制作された降旗監督の「ホタル」を、クリニックのベッドの上で見た。日韓関係を背景にした重い重い映画だった。
昨年、大もうけした「永遠のゼロ」とは違って、人間存在の重さを知っている降旗の良心が、あのような作品を生んだ。
http://www.aritearu.com/7day/Spirit/Hotaru.htm
昨年「永遠のゼロ」という邦画が封切られ、けっこう観客を集めたようですが。百田なにがしという安倍首相のおともだちNHK経営委員の書いたベストセラー小説の映画化ですが、DVDで見ました。「ホタル」は、この映画の2レベルも3レベルも上です。
ゼロ戦を主役にした映画では「零戦燃ゆ」などもありますが、最後は特攻の物語になるのは、それが日本人の琴線に触れて売れるからなのだそうです。
「零(ゼロ)」という特攻の映画は、見るのも時間の無駄。
「聞けわだつみの声」のリメイク版は、オムニバス形式ですが、学徒出陣の老残の回想として特攻の同級生の逸話が出てきます。「白菊」というおんぼろ練習機を特攻機にあてがわれた隊員の苦悩などという、みじめさというのは、かなり本質からかけはなれていると思った。
せめてかっここく死んでいきたいとの、いつの世の若者の虚栄心も、大事なことなのではあろうが。
そういう主題なら、矢吹飛行場から出撃していった、99式高等練習機(あるいは98式偵察機)をあてがわれた陸軍特攻振武80隊の全員がそうだったろうし、しかしなお、それでも、待機特攻隊の特操にあたがわれた木と布の中練(赤とんぼ)95式練習機よりも、ましだった。
さらにいえば、海軍の水雷部隊「伏竜」、ベニヤ板のモーターボート「震洋」まで、特攻の名の付く悲惨な兵器に比べれば、空の特攻にはまだあのころの男の子の「かっこいい」のかけらがあったんだろう。