鈴木邦彦 手紙

松浦 板倉 古橋 様始め原町の人々へ
 士官学校を卒業したばかりの名にも世間を知らない私及私共同期生を異郷のさみしさから忘れさせ、家庭的雰囲気に親味の御世話を為し下され、激しい飛行訓練の精神的疲労を忘れさせ、常に愉快にそして卒業後は温かい思ひ出、清らかな人情を胸にしつつ空の第一線に御送り下さいました御恩、何といって感謝したらよいもかわかりません。
 既に多くの原町の同期生が悠久の大義に殉じて居ります。彼等もあの世で屹度原町時代を思ひ出し懐かしがっているに違ひありません。
 私も此のたびは大命を拝し、武人至高の栄に必死必殺の挙に出でます。之こそ生前受けました大恩の報いられる道だと信じます。私は斯のやうな御恩返しが出来て幸福です。
 私の人生二十年の間、第二の故郷としての原町以て墳墓の地とも致し度く微髪を留めました。
 志きしまの白浜削る仇なみを
  千々に砕かん磯野荒岩
 戦捷の道は遠けれど必ず到り得べしと信じます。皆さま何卒御健闘下さい。
 末ながら皆様方の御発展の祈り程御祈り致します。以上