広森達郎日記 

十月十七日 日曜日 晴
寺ノ一日静寂其モノナリ。動中静モ亦此処ニ求メ得ベシ。何ゾ仙台ニ奔リテ洋労ヲ得ンヤ。道ハ近クニアリ、心ヲ休ムル所眼下ニアリ。
八時ノ列車ニテ浪江青田ノ宅ヲ訪レル。海岸ニ到リ大洋ヲ眺メ暫茫然タリ。
海ノ眺メハ大空ヨリ地上ガ可ナリ。「ボタモチ」ノ御馳走トナリ一五時帰ル。別院ニ寄りテ一休ス。

十月三十一日 日曜日 晴
浪江青田ノ家ニ至ル。(窪田ト) 大洋飛行機ヨリノ眺メトハ格別ナリ。返シテハ寄セ寄セテハ返ス浪、此ノ現象ハ神代ヨリ続キ尚無限ニ繰返サン。
偉大ナル哉。皇道モ亦斯クノ如シ。何ゾ瞬時ノ人生ニ迷ハン。将ニ泡沫ノ如シ。大洋ノ流ニ生滅スル泡沫快ナルカナ。

十一月二十四日 晴
午前、飛行演習。中村附近敵陣地攻撃。最後ノ飛行演習ナリ。原町一体ノ景色思出深ク印象強シ。三回ノ飛行ニテ名残ヲ断ツ。
午后ㇵ最後ノ訓示。青田来ル。酒ヲ持チ来タル。後始末ノ為ユックリ遊ブ事モ出来ズ残念。十八時頃原町ニ出ル。別院ニ別レ、荒井ニ別ル。次デ青田ト別ル。二十時ヨリ宴会。
原町ヨサラバ、永遠ニ日本人タレ。
余ガ原町ヨリ得タルモノ日本人ナリ。
   サラバ サラバ