20020622 長女へのメール

at 2002 06/25 21:27 編集

だからといって 投稿者:domingo  投稿日: 6月22日(土)01時35分56秒

空想の世界に生きているひとを 死んだひとがよろこぶのでしょうか。 わたしはすこしずつ、あなたの空想を壊してあげます。 あなたがいますべきことは、 老後にそなえて、空想癖を修正してゆくことです。 世界は陰鬱ではなくかがやいており 書かれた単語にまどわされてはいけません。 泣くものは、すべて自分のために泣いていることを知りなさい。 できない自分に対して自己憐憫という甘やかなわなにかかることをするなかれ。 死者のためになくことは、本来ありえないのです。 自分でこねあげた物語の迷路にはまっているのは、 おおきな誤解です。 死ぬる日は生まれる日よりも好し。 彼女の人生が成就した日を喜びなさい。 痛みは、そのためのわずかな価格です。 最後のあなたのやりたいことをいますればよいではありませんか。

すべて死するものはおめでとう。 それは完了であり成就だから。 迷いの世に生きることのほうが、よほど苦しい。 空想好きのインド人たちの中から、 なぜ仏教のような、覚めた現実主義が生まれたのか ちょっと考え始めました。 わたしにとって、あんなにも安楽に逝ったみごとさに お見事! というほかない。 お若いひとよ。精進なさい。 諸氏らよ、教えることはすべて私が生きているうちに諸氏らに教えてある、 悲しむなかれ、と悲しむ弟子たちに言い残した人がむかしいました。 あなたにいろいろと多くのことを教えてから、家庭から出してあげたかったが、 若くして手放した私は、そのことが気がかりです。 長くかけて、真理を探し当てよ。 わたしもまた50年をかけて求めています。 自分の夢に酔うことなかれ。 自分をかわいがっていたものを失うことの苦しみは 自分の都合です。 自分のこころにだまされてはいけない。 奔放で節操のない自分のこころと感情をコントロールする技術をもとめなさい。 空想することではなく、お茶をのみ、動くこと。足りない頭脳を停止しなさい。 自分を甘やかすのではなく、すべてのことの深い意味は何なのだろうか、と。 人間の死も痛みも、幻惑にすぎない。 すべては真理に達する道なのです。 あなたの人生最大の悲しみに、こころからの祝福を送ります。 おめでとう。真理に一歩近づいた若いひとよ。 あのひとも、ある日、愛するものを失う苦しみの原因を 求め始めた。 そして得た。あなたも、そのようであるように。 わたしも父親の死によって、はじめて真理に向かってあるき出したのです。 わが子よ。 あなたが真理に達するために、今度はわたしの命が必要なら よろこんでさしあげます。

子をあいする父より。

義母が亡くなって葬儀を終えた日

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