山本卓美日記

12月4日 晴
 連絡とれず。食事も、上等ならず。身体だるし。
 高山に遇う。奇遇なり。
「マニラ・ニイルソンに到るべし」と指示を受け直ちに出発せんとせしも、分散徹底的なりしため、集合に時間がかかり、さらに、一機めりこみたるため、18時、離陸せんとするや、入江機、尾輪引込む。已む無く追及を命じ、急遽離陸、ニイルソン着は、すでに薄暮なり。
 飛行場は中央高く、傾斜、甚だしき上、無風にて、みな、滑走著しく延び、遂に湯沢機、加藤機、北井機が小破・中破・大破す。
 ここまで来て、飛行機を壊すとは残念なり。さらに、注意を与えおけば可なりしにと、悔ゆるもおよばず。
 全員を帰し、第4航空軍に連絡、参謀長殿に会い、作命にて第4飛行師団に編入せられたるを知る。
 4飛師の近藤少佐殿に伺えば、レイテ方面は一刻の猶予も許されざる状況、急速に出動準備を完了せざるべからず。
 最初、機首を改装して爆薬を装し、威力を強化せんと希望しいたるも、この戦況にては、なす暇もなからん。

 高山は、原町の同期56期。高山昇。朝鮮出身の航空士官。のち66戦隊で、4月2日、沖縄で特攻。

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