歳末に第九はよく似合う

歳末に第九はよく似合う

 高ノ倉ダムの放水で新田川の支流が壊れた個所や、台風19号の爪痕の工事現場で片側通行を余儀なくされた8日、南相馬市を眺めながら、開館15周年記念の同市民文化会館「ゆめはっと合唱団」が一年かけて研鑽練習してきたベートーヴェンの第九合唱を拝聴してきた。
 南相馬市合併の前後22年の歴史は、文化会館のなかった時代に初めての第九が実現した喜びと、開館完成を祝った杮落しでの演奏披露に続き、震災復興祈念の今回へと十年おきに三度目の演奏である。
 クラシック音楽ファンの力を結集して、避難者人口減を乗り越えて、団員の思いは渾身からのエネルギーを発揮した。
 県出身のプロ歌手に、仙台フィルと、カラヤンの弟子指揮者山下一史氏が清澄で気合のこもった好演だった。
 ライトに輝く汗も、六人の小学生団員を含む真剣な表情の老若男女三百余名の歌声は、楽聖の魂の叫びを轟かせた。
 まことに十二月歳末に「第九」はよく似合う。

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