血圧降下剤と看護師の言葉

いちばん若い看護師が血圧を計りにきて、びっくりして叫んだ。ちゃんとお薬飲んでるんですかあ!
ちゃんと飲んでるけど何か。と私。
高血圧なので二種類の降圧剤のうち一種類のブロブレスは、なつのあいだ気温が高温だったために血圧が下がっていたのでお休みだったのだ。
彼女はいそいでカルテをチェックしたら、医師がその血圧降圧剤を処方していない事実を見て黙ってしまった。
彼女のプロフェッショナルな目からすれば私は「いつも医師と看護師の忠告を聞かないじじい」と思って居るらしく、ここはとっちめてやろうという口調がありありだった。
医師の指示をちゃんと守っていてもこの高血圧なのだから、医師の微調整が必要だと思っていても、その意見をいうべき相手が上司の医師なので黙ってしまったらしい。
こういう状況が、いちばんぼくを痛めつける。高血圧よりも、看護師の高圧のほうが、命を痛めつけるのだ。
どれどれどうしたの? いちばん年長の看護師がカルテをのぞき込み、医師の処方で薬が出て居ないのを確認するや、ははん、と理解してくれた。医師の指示ならしかたがない、と納得する。
彼女は先日あまりのぼくの血圧の高さに驚いたので、その事情を数日後にカルテを見て、すべての事情を理解したうえで、看護師の守備範囲ではないと自得したのであろう。
彼女のプロフェッショナル部分は、より重篤な患者へのケアということに熱心で、となりのお気に入りの患者に終日かかりっきりだ。わたしはほおっておいてもよい部類に認識されていることがあらためてわかって、これにも傷つくのだ。
月曜日にこんな状況に出くわすと、一週間ずっと思い気持ちですごすことになる。
きのう火曜日は終日雨だった。急に気温が低下し、肌寒くなった。半袖から長袖に。
外気の変化についてゆけないわが血圧。微調整は、自分でやるほかない。
医師と看護師とのながいつきあいでは、彼らの勤務事情と精神的な好悪にも左右されるところ大きいので、心理的な防衛も必要だなあと思う。
きのう長谷川豊の「透析患者は死ね」というエッセイを見てしまったので、なおさら。
健康なおごりなんて、かんがえたこともなかった。
わかいころに健康保険を医者にも行かないのに月額数万もふんだくられて「老人たちが医療費をどぶに捨てている」と憤ていたころを想い出していま恥じ入る。
医療現場の実際を自分で経験してみて、その事情を理解できてはじめて全体が見える。

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