くうちゃんは鳥に呼びかける。2003.4.
くうちゃんは鳥に呼びかける。
「くぇ、くぇ。くわぁ、くわぁ」
外でさえずっている鳥に、まるで遊ぼうよ、とでもいうように。
鳥たちにとっては、黒い毛に覆われた俊敏な小型四足肉食獣は、「恐怖」の対象でしかないだろうに。
何回か(私の知っているだけで3回)、小鳥を捕ってきたことがある。鳩、雀、尾の長い鳥。血の匂いや、羽毛の感触とか、ネコのDNAに組み込まれた「本能」が、彼女の血を狂わせるのだろう、勝ち誇って、獲物を見せびらかせに帰ってきたときのQちゃんは、ぐるるるると、深い喜悦の喉を鳴らせて、横取りされまいとして台所に持ち込む。
毎日、朝から窓の外を見ながら、生き物への好奇心と興味で、
「くぇっ、くぇっ、くわっ」と、鳥の鳴き声で呼びかけて、近づきたいという思いを抱いたとたんに、もう低い姿勢になり、うつぶせ、待ち伏せのポーズになり、匍匐前進し、猛ダッシュする。すでに、いつのまにか狩猟するネコ族になっている。人間に飼われて、自分を人間だと思っているペットが、個体から系統発生へと溯って一気にケモノになる瞬間。
「ぐるルルルルルル」
すでにもう野性の輝きに包まれている。肉と骨と毛の宝石。世界でいちばん美しいフォルムの、神様からの贈り物。
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