2/15 キャバレーFで学んだ「一言ホステス」の相槌
キャバレーF 家族経営の水商売
おはようドミンゴを創刊した夜、読売新聞販売店の原町南と原町北、および相馬店の3店の社長が集まって、創刊祝賀に西新聞店の社長の近所のなじみのキャバレーFという店に招待してくれた。
こういう場所になじみのない私にとっては、初めての経験だったが、キャバレーといっても名前だけの原町の場末の店で、バーと違わない。フロアがあって、広いだけ。経営者家族が全員で店をやっている。店のおやじと婿がウエイター、バーテンダーで、娘と母親がホステスをやっていた。
母親は、右となりの客の手を自分の膝に乗せ、右となりの客に色目を使い、向かいの男の足の間にハイヒールの先でちょっかいを出しながら応対する。若い娘が、うんうん、そういうことってあるのよね、と客の話に相槌を打つ。檀那のバーテンダーが、それを見ながらシェイカーを振っているのである。
別に色気を求めてのことでないのは分かる。西社長の、商売上の接待に、近所のお得意だから、接客の特によく使う場所なのだろう。
みんな楽しそうに盛り上がっていた。気分よく酔っていた。いちおう私も話を合わせて、政治だ経済だ社会一般だと話題を提供した。
自宅の延長のキャバレーという家業でホステスをやっている娘は、さかんに相槌を打つ。
そういうことって、あるのよねえ。そういうことってあるのよねえ。そういう答えをして、客に合わせろ、と母親に教えられているのであろう。何を喋っても、同じ合いの手を繰り返す。
3人の社長は、本当に嬉しそうにドミンゴの門出を祝って、酔いしれていた。翌朝早いのに、よく飲んでいた。新聞配達と集金は、知的な商売ではない。自分たちが独自のミニコミを発行するという快感は、大きな満足だった。
けっきょく、この晩の客は、わたしたち4人だけだった。