きょうは原町で帽子を置き忘れて来たんじゃない? と調べられた。
 もう何もかも、私をチェックしたいようだ。
 ところが、廊下の外着をかけるフックに、ちゃんと帽子がかけてあっても「あんたは必ず忘れるから」という思い込みが、現実を見せないので、ここは英朗を懲
 らしめようと、廊下に立ってゆき、チェックしたら、文句のつけようがなく、いきなり「おかしい。こんなはずではなかったのに」という不服な顔になって黙り込んだ。
 これは神経症だよ。台所で私は朝飯を食っているのを観るだけで、帽子をかぶっていないから、原町に帽子を忘れて来たにちがいないと思い込み、私が「家の中だから被っていないだけだよ」と説明しても、もう私には一言も騙されないわ、という決意に満ち満ちた表情で、廊下に見に行った。
 そこにいつものごとくにちゃんと帽子があるのを確かめてさえ」納得できずに、私に騙されているに違いないと、次の妄想に囚われているらしく、テレビの画面の新ウイルスのニュースの簡単な話をしかけても、もう私には対応できずに困惑しているもがありありの状態でした。
 妻が完全に壊れてしまいました。沈黙。思考停止。
 日曜日の夕方から、ずっと話しかけても応えず、夕食を食べるのに、8時ころまで食べずに私を待って、電気釜のご飯はたっぷりあるが、おかずを全く準備していなかったため、息子に近所のスーパーに何か勝ってこいと命じた。息子は寒いしめんどうだから行かない。

 私が駅のスーパーで5割引きの弁当を一つ買って会えり、それを食卓に出したら、「わたしたちみんな食べてないのよ! 一人で食べる気なの」と妻は悲鳴を上げた。
 「これをおかずにして残ってるご飯をみんなで食べよう」と言っても、息子におかずの半分を食べさせ、自分は決して私が刈って来た弁当には手を出さない。
 こうなったら、もう妻はテコでも動かない。
 私は二人がもう食べてしまっていたら買った半額の弁当を食べ、食べていなかったなら、3人で分けておかずを食べればよいと考えてのこと。それが通じないので、手を出さないため、けっきょく半分のおかずがそっくり残ってしまった。
 妻は「いつまでも食べないと息子に食べられちゃうわよ。さっさと食べてちょうだい。そうしないと、テーブルが片付かないから」と、あらたな文句を言い始めた。
 怒りは依然と続いていた。
 私はさっきおかまのご飯を、お湯だけでかきこんで、もうおなかがいっぱいなのに、妻の魂は、よけいにこんがらがってしまい、思い込みに縛られているままだ。
 

Total Page Visits: 3 - Today Page Visits: 1