ダラシネヤ姫ものがたり」❼-4 
柴田勲選手が走者で二塁を盗んでいる。次の打者のクリーンヒットで、巨人軍はたちまち一点だ。凡打でも長嶋のホームランで、2点だ、3点だ。長嶋がフルスイングで豪快な三振でスタンドを沸かせて、でも、王の記録的ホームランで三点っだちゅうの。5、6,7,8番と、敵のピッチャーは気を抜けない。こんなチームがありますか。高田って8番だったでしょ?
 つまりライトだわな。ライトって、大型ヒットメーカーの打者が入る暇なポジションですよね。
 ところが、イチローがメジャーリーグに入った時、こんなライトはいなかった。アメリカ人の毛むくじゃらな豪快な帆0村んバッターが、球の飛んでこないライトでは、守備で美技を見せる必要もないしね。ところが、イチローはちがった。米国野球のセオリーで、易々と」犠打で一点取れるライトフライが、イチローのレーザービームでホームベースでタッチアウトになっちゃうんだからたまらねえ。こんな野球がアメリカにあったかい。

ダラシネヤ姫物語り ❼-5

ところが、グラヴを後ろ手にしてアクロバットのように打者の飛球をキャッチする。打席に着けばセイフテイスバントで、若駒のように駆け抜けてぎりぎり一塁上で一瞬の差でジャスト・イン・セイフ。塁に出れば次には盗塁。まるで、細やかな美しい日本野球の面白さを通して、イチローが野球のそもそもの本質的魅力を目の前に現出させて全米ファンに面白くわかるように伝えたのである。
イチローは新世紀の世界野球の宣教師であり伝道者であった。
ホームラン中心のパワープレイ中心の野球ではなく、まさにチームプレイの野球こそが醍醐味でることを教えたのである。
バットをピッチャーに向けて、日本刀剣の切っ先を喉に向けてきっと凝視する姿は、ユニホーム姿のまさに21世紀の古武士「さむらい」であった。
これこそ野村が求めてやまぬ魅力ある野球本来の理想形であろう。

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