向井美香様への手紙 幼児の詩について

「幼時発達精神分析と幼児の詩の総合的観察」という論文によりますと、次のように書かれてます。
このような愛らしい幼児の詩は、五歳までの、しかも夏休み前までで発することをやめる。夏休み以後は、完全な大人の言葉の世界に移行してしまう。二歳から四歳までしか、こうした「幼児の詩」が出てこないのは、なぜなのだろうか。
それは、子供の何気ないことばが、うまれてから五歳半までが、極端に少ない語彙からありあわせの組み合わせでしか言葉を発せられない宿命によることに起因する。それに加えて自然な自由発想で発される幼児語とも表現できる幼児特有な片言の語彙のうち、大人の印象に残らないものは瞬間的に除去されて忘れられ、意味のないようだが発語意思には理由がある幼児の不思議な言語組み合わせで、大人には異世界の言語芸術の綾(あや)のようなものに感じられ、それだけが印象に残っている。
そこで、大半の母親はこう思うのだ。「うちの子は天才に違いない」「すくなくとも詩人の素質があるに違いない」と。
ところが、五歳を境に、詩人の我が子は消滅してしまう。ぱったりと消え失せたあぼ時代の詩人はなぜぃ得てしまうのか。答えは簡単だ。
あなたのおこさんは、大人になってしまって、かわいらしい幼時の詩は失われ、つならなく感じる母親たち。そして完全なおとなの会話をマスターした子供。こうして、かぎりなくやさしい聖母のような印象の妻=幼児の母親と、第三者の男=うるわしい聖母子像からはみ出した外から観察しているだけの男=夫=幼児の父親という三位一体の普通の現代日本の家族になる。いうことなのだ。
これらはすべて虚像である。妄想と言ってもよいかもしれない。(つづく)

 注1)「ひばりのように」 幼児の詩 付録「幼時発達精神分析と幼児の詩の総合的観察」
    編集者 吉田英朗
    発行者 吉田ノブ
    発行年月日 昭和五十五年三月二十一日 発行
    発行所 ひばり音楽幼児園 (園長 吉田ノブ)
960 福島市伏拝字沼ノ上 二丁目二五九番地
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