ミニチュア模型の行方 つづき

 やがて、ミニチュア模型はロビーから取り払われてしまった。本物の無線塔の運命と同じ道をこの模型もたどるかのようであった。自分の町の歴史に興味を持たないという空気が、模型の取りかたずけられたロビーにホールに、みちみちているなあ、と思ったものだ。
 後日、前述の市職員を直してから電話が来た。その声はすまなさそうに言った。
「誠に申し訳ないが、壊れたミニチュア模型を直してもらえないだろうか」
 私は、本心ではすぐにでも模型を直しておきたかった。が、「やがて本当にこの模型の値打ちが分かってもらえる時が来るだろうから、その時にきちんと予算を組んでいただいたら、御望みのものを作ってさしあげます。」と申し上げた。
 「いまここで直しても、別段の配慮を役所に期待できませんからまた壊されるのがおちでしょう。ところで、今なら補修にいくら出せるんですか」
 「二万円ぐらいです」

注。
 この一件は予想どおりの結果になった。市職員は、私に対して謝罪する必要なんかないんである。直接の命令権者の市長と、当時のNHK局長からすでに市役所に所有権は移っているし、わたしにはこれを作ったものの所有権はない。
 NHKの出演料だって、放送当日の分と再放送料との二日分出たが、学術経験者として出演した大学教授たちは、もともとの出演料のランクが違い。私は本のテーマを提供し、アイデアを出し、最後の録音までつきあったが、民間人だから「一般人扱い」の最下級ランクの出演である。
 それと同じような扱いを、役所でもやっている。
 一般市民の私は、市民の誇りとする無線塔の歴史を描いた展示物であたっても役所の修繕費扱いであり模型屋の材料費扱いの失費であり、とうてい受け入れるべき内容ではないと思って、ぐっとこらえた。
 どこまでも、人間の品性や尊敬を行政の末端の職員に問いかけても無駄であろう。以後、敬して遠ざけるのである。