原町無線塔、朝日座など福島県南相馬市原町区(旧原町市)の文献を公開

間違いだらけの「原町市史」:

間違いだらけの「原町市史」: 二上 英朗 日時: 2011年11月23日 5:42 ·
昭和四十三年に大冊の「原町市史」が発刊された。まとまった郷土の歴史が初めて市民の前に提示された。ところが、中学生だった頃に同級生の高篠文明君が「無線塔に関する記述がおかしい。自分で調べたものと内容が違っている」とショッキングなことを言う。彼は、無線塔の真下に住んでいて、毎日それを見上げて暮している。わたしもまた三年間、塔の下の原町第二中学校に通って、見上げて育った。彼は塔の内部の鉄梯子を上って塔頂上部のコンクリート剥離の現場や、地上二百米上空からの市内のパノラマ写真を撮影し、塔の下に住む老人を訪ねては、聞き書き調査をもとにした記録を、翌年になって独力でガリ版刷りの印刷物にして知人友人に小部数を配った。交通の不便な時代に中学生の身で、バスを乗り継いで、三十キロ南の富岡町の辺鄙な海沿いの、さらに不便な場所にあった富沢という農家を訪問し、そこがかつて大正九年に開局した磐城無線電信局という国家機関であったことを調べ上げ、原町の無線塔は、その出張所施設であることを、すでに彼はつきとめていた。かつまた磐城無電局は、大正末期に民間会社に移管され、施設は大改造されて、塔そのものの姿も、周囲の副柱もまったく変わった、ということを、当時を知る老人たちの証言から知っていた。「原町市史の写真は間違っているよ。無線塔の記述も違う」という彼の言葉は、わたしの心を揺らした。足で歩いて取材して、自分の目で確かめて、出した結論が、それだった。のちに、大学時代にわたし自身が、東京に住んでいた地の利を活かして、卒業の記念に、郵政省や放送博物館、外務省外交資料館、国土庁、電波管理局、KDDなど、関係省庁や関係会社を歴訪して史料を得た。その結果、中学生だった同級生のまとめた内容を検証したうえ、寸分たがわず、それらが事実であったことを知った。 当時、福島中央テレビが創業十周年を記念して「ふくしま文庫」という叢書を発刊しており、シリーズ出版担当者の星亮一氏の推薦でその一冊として「原町無線塔物語」をまとめる機会を得た。

1)原町市史の口絵写真の無線塔は大正十年のものではない
市史の巻頭の口絵写真に、原町無電塔として五本の副鉄塔と一緒にコンクリート塔が撮影された写真が掲載されているが、その写真説明に大正十年とある。この写真は明らかに昭和3年以降のものであって、間違っている。大正十年の開局当時は中央のコンクリート塔には頂上部分に鉄板を羽根のように突き出した特徴的な作業場(ヤード)が付いており、周囲には十八本の六十メートル木製副桂が建っていた。
アンテナの設計が全く異なるから外見的に明確に判明するのだ。その写真の下に、局舎の写真が掲げられているが、これにも傍らに鉄塔が建っているので、昭和3年以降のものだと明確に判る。ところが、これも市史は大正十年と誤った写真解説を付している。
この間違いは、原町市総務課文書広報課発行の市制40周年を記念して平成5年に刊行されたデラックスなフルカラーの市政要覧のパンフレットにも引き継がれている。年表の中に、大正末期の無線塔の写真として掲げられている。(昭和だってば。) 教育委員会文化課が発行した写真集でも、安易に引用し、さらには民間業者の写真集に間違った情報を提供しつづけて、誤謬を再生産させ拡大しつづけた。
その後、インターネットで公開された「原町市の沿革」でも、同じように、根拠のない大正末期と記述されている。さらには英文で、全世界に対して堂々と間違っている情報を発信しつづけたのである。 さらに近年、長野県の郷土出版社から出た写真集「相馬双葉の一〇〇年」にもその誤謬が引き継がれ、p68に「ただいま受信中 昭和初期」というキャプション解説で、大正十年の原町送信所の開所にあたって逓信省の許可を得て発売された絵葉書のうちの一枚(「原町無線塔六十年史写真集」に収録)を、なぜか対象の写真を昭和にしてしまっている。根拠はなにもない。「なんとなく」キャプションをつける、それが長年の相馬地方の郷土史家の通例なのである。
同じ出版社の二匹目のどじょう「相馬双葉の歴史」でも、誤謬は引き継がれる。「無線塔開局式 大正10年7月3日」と解説されている写真は、昭和3年に撮影されたものだ。 無線塔の開局式というのは、大正九年十月に行われており、大正十年七月三日に行われたのは、磐城無線電信局原町送信所の開局式であって、これは原町尋常小学校の校庭で開催された。塔の下で開催された写真は、昭和3年の改修工事の完成式なのである。
単純で基本的なこうした事実に無知であるのは、しかたないが、この誤謬を世間に増幅しているのは、南相馬市の博物館の学芸員なのである。困ったものだ。

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