九九式襲撃機、念願ノ実用機デアリ且之ヲ操縦シ、以テ御奉公致スノ感激ニ燃へ、中練ノ後方席ヨリ直チニ諸装置ノ完備セル低翼単葉機ノ前方席ニ乗換ルノ興奮ヲ全身二感ジ搭乗セリ。
離陸ニ於ケル方向保持ハ―容易ナルモ、ヤヤ押へ過ギタル感アリ、浮揚速度、毎回凡ネ一七〇キロヲ超ヘタリ、浮揚瞬間ノ感覚ハ中練程明瞭ニ感ジ得ズ、上界二移レり、安定感頗ル大ナルモ複葉機ト異ナリ傾ノ基準取り難ク(操縦)桿ノ形又異ナレバヤヤ傾二対スル自信薄シ、旋回ニ於ケル傾度及機首ノ上下ノ基準ノ取リ方モ操作ノ補助翼旋回ナルト共二ヤヤ迷ヘリ、水平飛行中ノ前方視界ノ良好ナル大イ二面喰ヒタリ。最モ難物ナリト感ゼシハ、引キ「レバー」ニテ瞬間自覚的ニ、我レ知ラズ反対操作ヲナシ、殊ニ降下中、目測ノ修正時、地上滑走ノ停止間際ニ於イテ誤ル。返シ始メヨリ接地ニ於イテ、返シ過ギタガルヲ自覚ス特ニ接地后操縦桿ヲ引キ切ル中練ノ操作ヨリ一日モ早ク脱スルノ要ヲ痛感セリ。
惟フニ、確乎タル信念ヲ以テ、操縦スルノ気概ト慎重ニシテ綿密ナル注意分配ㇳヲ以テセバ、意外ニ容易ニ操縦シ得ル機ナラント考へラレタリ。

中練をマスターして、次に実戦機である99式襲撃機に移った時の初搭乗の感激を書いた便箋が、操縦手簿にはさまっているものを大阪の研究家から提供された。
中練(赤トンボ)の操縦訓練の最期の日に、「さらば矢吹飛行場」との記入があった。