野馬掛奇観 二面の続
△ 不思議な神水
十三日正午、小高の野馬掛を見る。元原は野馬を此処に追ひ込んで手取りにしたるものだ相だが、野馬が居なくなってからは飼馬を放して、昔の型をやるのである。
△仇討ちの図 小高神社の広前に竹矢来を廻し見物人は矢来の外を十重二十重に囲んで押合ひへし合ひ中には矢来の中から首を出して団扇を使ふて居る者なども居る、何と云ふ事もない絵本にある仇討の図其処なのは面白い、まさか人間が馬を仇に思って手取りする訳でもあるまいに。
△白衣の取手  軈て時間になると下手の方からや「アーや、アー」と云ふ鯨波を上げて約二十人の壮者が神社の前に駆け出して来て殆んど狂態の如く其辺を暴れ廻り、社殿のある鈴を破れる程叩き殴って、それから此人人は矢来の中に現はれ、神職から払の式を受け神酒を戴き、神水を呑み、神符を紙撚りにしたものを白鉢巻の心にし甲斐甲斐しく身支度くを整ふ上下皆白衣足は只白足袋の上を縄で二廻りして結んだばかりだ。斯くて裃を着した人が三宝に礼を捧げて其を振り撒きながら場を一周して清める、同じく其跡から神職が榊を持って清める。
△神馬を献上  明治44年7月15日民報

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