赤い川黒い川 二面の続
 雲雀が原の人模様
△一起又一伏 本陣前から一千の騎馬が争ふ有様を見ると其壮観は実に筆紙に尽し難い、ドーンと一発の煙火が揚がるとあれ程の馬は皆鬣を揃へて待って居る、旗の下る方向に指し物が靡くのは一号令になって伏するが様である、而して一騎鞭を以て該旗を拾ふて走ると今度は其方に伏す、一上一下一起一伏とは正に此事で其見事さは云ふばかりなしだ。
△色ある模様  さしもの広い雲雀が原も殆ど人を以て填めたと云っても差し支ない位だが、尚東西縦横幾条かの道には人が蜘蛛の子の様に居る。中には種々雑多な旗印、夫から婦女子の長袖と云ふ様に殆どありとあらゆる色がある。本陣山から見ると是が翠の大草原を色模様にして時に閃いたり、つぼんだり。
△色ある流れ  愈々祭典が終了して十万の人が一時に崩れて諸方の路から帰りかける、此時も記者は又山上から見て居た今度は先程の模様が一変して色ある川が幾筋も出来た、川か海に向って流れる様に、此色ある流れは皆原の町の方面に流れて居る、穏やかな流れではあるが点々騎馬の交わった処は洪水の様である。

明治44年7月14日福島民報

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