福島県相馬郡新地町福田地区に伝わる「御舟地蔵」の話も津波にまつわるものである。そして、この話は1912年(明治45)年5月に編纂された郷土史福田村」の第18章名勝旧跡のことろに、
 御舟地蔵は大字福田にある地蔵森という山の頂上に鎮座している。その昔、舟輪沢というところにあったが、大津波のときに神体が舟をあやつって山頂に移ってきたので、現地の人はそこに祠を作って祀ったという。この地方の漁師たちの信仰には篤いものがある。

 これは繋舟伝説ではないが、東電福島第一原発のある福島県双葉郡大熊町の海岸から8~10km西に入った野上向山地区に「魚畑(いよばたけ)からかい森」という伝説があり、森で貝が拾えたということが言われている。これは「大熊町史」第一巻・通史(大熊町、198⑸年3月)1212頁に紹介されているが、1930(昭和5)年頃に作られた謄写版の「双葉郷土史」に再録されていたものである。
岩本稿による。

 御舟地蔵もからかい森も、巨大津波や犠牲者も歴史の陰に忘れ去られて、ノアの箱舟がアララト山のてっぺんに着岸した創世記の話や、ほら吹き男爵が大雪の翌朝に教会の尖塔につないでいた馬が残ったという奇想天外でユーモラスなおとぎ話を連想して、不謹慎な含み笑いを禁じ得ない。

 

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