二上英朗編集長の相馬野馬追を追う

七月二十二日。午前。相馬市。野馬追出場者も、私服で生業を片付けるのに忙しい。午後一時半。中村城址にて、野馬追祭安全祈願の護摩が焚かれる。総大将以下、重臣たちも神妙な顔つきで臨んでいる。近時は、この儀式も屋外で執り行われるため、一般観光客も見ることができるようになった。同じ時刻、原町市。国道六号線沿いの昭和運輸株式会社のトラックターミナルでは、同社の大型クレーン車を借りて原町青年会議所メンバーが、明日二十三日夜の盆踊りパレードに備えて、トラック荷台に屋台を組み、山車とするために化粧がほどこされる。太鼓を積み込み、軽く試し打ち。さあ、準備は万全だ。あとは当日の出番を待つばかり。
原ノ町駅では、二十日の土曜日頃から帰省者が相次いで降りる姿が見られた。
国鉄利用者がもっとも多いピークの時期となるのが、この年に一度の相馬野馬追祭の前後の時期。
七月二十三日。原町市。朝から花火が鳴り渡る。午前九時。恒例になったキッコー食品工業株式会社福島工場(原町市小川町五五五)の「デルモンテとまと祭」が開幕。工場構内が一般市民に解放された。

また、受付で来場者に記念の詰め合わせセットが配られ、人気を呼んだ。
福島工場は、原町市が工場誘致したなかの一つで、工場面積が四三、〇〇〇平方メートル。主に、れるモンテ・トマト・ケチャップ、トマトジュース、ラグー・スパゲッテイソースを製造している。
一般市民が続々と来場するなか、九時二十分。野馬追執行委員長門馬直孝原町市長や、軍師太田豊秋県会議員を乗せた特別車が出陣の場所へ向かう。

いよいよ本番
午前九時。総大将は宇多郷の騎馬とともに中村神社から出陣。北郷、中ノ郷、小高郷、標葉郷の騎馬隊も、それぞれの地区から出陣。
同日午後一時。妙見三社すなわち中村、太田、小高の神輿と各騎馬隊が雲雀が原に到着。
午後二時から相馬藩古代宵乗り競馬が始まった。
原町市本町一丁目の松永牛乳店社長松永時雄さんは、例年、個人で野馬追PRにつとめているが、盆踊りパレードでは先頭に立って踊り、大活躍だった。
「一人でも多くの人に、見てもらいたい

原町青年会議所メンバーの招きで二十三日夜は盆踊り見物の後、弥助寿司で懇談。野馬追城に泊り、二十四日は市内南町の高良焦点で、野馬追行列を楽しんだ。
長谷川茂子さんの感想。「盆踊りの時のミスはらまちのみなさんが、とてもきれいでしたね」
同行の八十島陽子さん(グラフィック・デザイナー・東京)と、中村京子さん(ワ―プロ・タイピスト・東京)の感想。
「馬が中心のお祭りという感じですね。コンクリートの舗装道路とマンホールで、馬が足をすべらしたり、汗びっしょりになって歩いてゆくのを見ると、馬も大変だなあと思う」
「あの雲雀が原というのは祭り以外では使わないんですか。もったいないですねえ。これが東京だったらなんて、つい考えちゃう。発想を変えなきゃならないんじゃないかしら。」
「二十三日に、駅前通りで初めて馬の行列を見たのが一番印象的でした」
女性の騎馬武者や、子供を乗せた馬が通りかかるたびに、
「勇ましい姿で出場しているのを見て感動します。子供たちも本当にかわいらしくて若と野様という感じですね

留学中の東南アジア(タイ・マレーシア・フィリピン)からの一行が下車。
原町市旭町の北原好さん一家が出迎えた。一項は、北原さんの案内で、二十五日まで滞在。市内各所を見学した。
七月二十四日。午前九時半。原町市の旧国道小川町地区から、隊列を組んだ野馬追行列が出発。南へ、南へと、続々人馬と旗の一軍が行進する。蹄の音と観客のどよめき、役付き武者の号令や、商店のスピーカーから流れる相馬民謡などが混然一体となって熱気を盛り上げる。
先導の自動車が、ゆっくりと姿を見せると、いよいよ祭りは最高潮だ。
上空を、県警や報道のヘリコプターが飛び交い、五万人の観客で埋まった祭場地では、キリスト教や世界救世教の便乗PRも飛び出す一幕も。
騎馬行列のつらなる旧国道沿いに露店をならべた土産物売店には、相馬焼・騎馬人形ほか、フィルム・カレンダー・記念たばこ・小物類が用意され、アルバイトの子供たちも必死に物売りの声を枯らしていた。
今年の人気商品は、野馬追保存会が発行したガイドブック「相馬の野馬追」で、定価五百円の手頃な値段もあってか飛ぶように売れた。

青い目もぱちくり
年々国際的になってきた野馬追祭だが、子と愛も外国人観光客
うのに列にならんでいた白人男性は、香港在住のイギリス人で、高校教師。二カ月の旅行中だという。
このほか本陣山で甲冑競馬と神旗争奪戦に見入っていたケリーさんというアメリカ人観光客は、家族と友人連れの七人のグループ。
「こういう祭りは大好きだ。グレート(雄大)だね」
同伴の奥さんは、ウエンデーさんというカナダ人。野馬追はどうですか、と聞いたら、
「子供がいるので、それどころじゃないの。おちおち見てられなくて残念よ」とのこと。
相馬市の招待客でカリフォルニアから来たという年配のアメリカ人夫婦は
「ワンダフル(すばらしい)。特に、着ているものが美しくて良かった」と言う。
原町市本陣前の鶴崎秀樹さん宅には、スイス人の少年ステファン・ユニーダー君がホームステイしているが、二十三日の午後いっぱい、旭公園のお祭り広場を見学。おみこしや露店などを珍しそうに眺めて歩いた。二十四日の神旗争奪戦は、
「とても迫力あって、すごい祭りだ」
と青い目をぱちくり。
原町市内にホームステイしている交換留学生の二人も、ホスト家庭の案内で、野馬追祭を見学した。
原町市錦町一丁目の武藤甚一さん方に滞在中のジョージ・スコット・シュテイ君(16)は
「あんまりたくさんの人でなので

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