06 女子寮の星スズイさん・事務室の鈴木小松先生

 午後からの勤務をほかえて、女子挺身隊の少女たちは、点呼のあと自分の寄宿舎へ戻っていた。
 女子寮は三棟ならんであって、工場側からそれぞれ北寮、中寮、南寮と呼ばれていた。星スズイさんは部屋は、北寮の東端一号室つまり食堂に最も近い場所にあった。炊事係だったからである。
 運命の呪わしい一本の直線の延長線上に、小松先生、学徒斉藤和夫さん、厨房の大原トシ子さん、そして女子寮の星スズイさんが揃った瞬間、おきなり赤い衝撃の閃光が通過した。
 星スズイさんは自室の一号室に入ったとたんに轟音が部屋いっぱいに炸裂し、かrだごと吹き倒された。
 隣の中棟十二号室にいた宝玉トシ子さんは窓越に北寮を見た。一体何が起きたのか判らなかったが、駆け付けてみると星さんの右の膝のあたりから、ドクドク鮮血が噴き出しているのを目撃した。
「敵の空襲だわ」
宝玉さんは、その時初めて気づいたという。空襲警報も何もない、予告なしの突然の出来事だった。すぐに寮長のいる事務室へと走った。
「そしたら、寮内の混乱する人ごみの中に、原町小学校の鈴木小松先生が腹部を真赤な血で染めて、両肩を支えられて運ばれているのに出会いました。出血がひどいらしくて、真っ青な顔でした」
 誰かが声をかけた。
「先生どうしたんですか!」
小松先生が答えた。
「ここがな。やられた」
意識は、はっきりしていた。

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